セッション情報 ワークショップ1(消化器がん検診学会・肝臓学会合同)

超音波検診の目指すべきもの

タイトル 検W1-7:

超音波検診による膵癌の早期発見

演者 深澤 光晴(山梨大附属病院・消化器内科(1内科)DELIMITER山梨県厚生連健康管理センター)
共同演者 依田 芳起(山梨県厚生連健康管理センター), 榎本 信幸(山梨県厚生連健康管理センター)
抄録 【目的】膵癌の治療成績向上には無症状期での早期診断が必須である.超音波検診は無症状期に膵癌を発見する手段の一つであるが,後腹膜臓器であるため条件により観察困難な症例も存在する.今回,膵癌の早期発見における超音波検診の有用性について検討した.【方法】2000年~2011年までの検診受診者のべ799,623例を対象として,膵癌発見に有用な所見を検討した(検討1).また,同時期に症状により病院を受診して発見された膵癌をコントロールとして,検診発見膵癌(検診群)と症状受診膵癌(症状群)の診断・治療成績を比較した(検討2).【成績】検討1. 12年間の超音波検診受診者799,623例中,要精検は1,259例(0.145%)であった.907例(72%)が精検受診し,98例の膵癌が発見された(癌発見率0.012%).発見契機となった所見は,膵腫瘤70例(71%),膵管拡張42例(43%),膵嚢胞17例(17%),胆管拡張18例(19%),肝腫瘤(転移)12例(12%),その他1例であった(重複あり).異常所見ごとの膵癌率は,膵腫瘤14.1%,膵管拡張1.0%,膵嚢胞0.16%,膵腫大・萎縮0%,膵内部エコー異常0%であった.膵管拡張,膵嚢胞,胆管拡張などの間接所見は全体の50%で認めた.膵管拡張,膵嚢胞について膵癌リスクとしてのオッズ比を算出すると,膵管拡張159(初回指摘219,拡張歴あり 46),膵嚢胞16(初回指摘26 ,嚢胞歴あり9)であった.また,3例は,エラスターゼ1,CA19-9高値で発見され,超音波検査では指摘されなかった(膵頭部2例,尾部1例).検討2.詳細な情報が得られた検診群71例と症状群172例について比較すると,検診群は症状群に比べて,腫瘍径(検診群25mm vs症状群:34, p<0.001),pTS1率(21% vs 4%, p<0.001),転移率(27% vs 43%, p=0.018),手術率(51% vs 30%, p=0.0025),生存期間(M)(19.2 vs 9.8, p=0.0045)において有意に良好な成績であった.【結語】超音波検診は無症状期の膵癌発見に有用であり,膵全体の描出が難しい場合でも膵管径や嚢胞の経時的変化に注目することが重要である.
索引用語 膵癌, 早期発見