セッション情報 ワークショップ1(消化器がん検診学会・肝臓学会合同)

超音波検診の目指すべきもの

タイトル 肝W1-8:

腹部超音波検診における膵管拡張の意義

演者 藤澤 聡郎(NTT東日本関東病院・消化器内科)
共同演者 郡司 俊秋(NTT東日本関東病院・予防医学センター), 松橋 信行(NTT東日本関東病院・消化器内科)
抄録 目的:膵臓癌は症状がみられた時点で手術不能な場合が多く, 検診による早期の膵臓癌もしくは高リスク群の拾い上げが重要である. 2011年版腹部超音波がん検診基準では, 膵体部での主膵管径が3mm以上で膵管拡張ありと定義している. 我々は検診にて膵管拡張を指摘された症例を解析し, 膵管拡張と膵疾患との関連, またその予測因子を特定することを目的とした.対象:当院と関連病院の検診センターにて1995年から2011年の17年間に腹部超音波検査を施行されたのべ247,127人のうち, 新たに膵管拡張を指摘された346人(0.14%)を対象とした.方法:超音波検査にて膵管拡張を指摘された症例を抽出し, CT, MRCP, 超音波での1年以上の経過観察のいずれかの方法で原因疾患を特定した. さらに検診時の身体所見, 嗜好歴, 採血データーなどの44項目を疾患ごとに比較し, 膵管拡張と合わせて疾患の拾い上げに重要なパラメーターを多変量解析にて特定した.結果:精査の結果, 異常なし231人(66.7%), IPMN43人(12.4%), 慢性膵炎16人(4.6%),膵癌5人(1.4%), 膵管癒合不全3人(0.8%), 乳頭部腫瘍1人(0.3%), 自己免疫性膵炎1人(0.3%)と診断されており, 45人が結果不明であった. IPMN, 慢性膵炎, 膵癌の3疾患に注目し, 検診時のデーターにて回帰分析を行った結果, IPMNでは膵管径, GFR, HbA1c(JDS)の3項目, 慢性膵炎では膵管径, 白血球数, 総蛋白量, 尿酸, γ-GTP, HbA1cの6項目, 膵癌では膵管径, body mass index, HbA1cの3項目が疾患予測因子と考えられた. 特に膵管径, HbA1cは3疾患に共通した疾患の拾い上げに重要な因子であり, この2項目のみで検討した場合, 膵管径は4.1 mm vs 3.3 mm, odds比3.0, HbA1cは5.8% vs 5.2%, odds比2.5と疾患群で高値を示した.考察:膵管拡張は膵癌のみならずIPMN, 慢性膵炎など膵癌高リスク群の拾い上げに有用であり, 特に4mm以上の膵管拡張, HbA1c高値を伴う場合は, 積極的に精査を勧める必要があると考えられた.
索引用語 膵管拡張, 膵臓癌