セッション情報 |
ワークショップ2(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)
急性肝不全の予後改善に向けた病態理解と治療の進歩
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タイトル |
肝W2-1:わが国における急性肝不全の成因別実態と治療法の現状
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演者 |
中山 伸朗(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科) |
共同演者 |
内田 義人(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科), 持田 智(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科) |
抄録 |
【目的】わが国の急性肝不全は,B型キャリアと自己免疫性(AIH)の昏睡型に救命例が殆どなく,薬物性と成因不明も亜急性型の救命率が低率である.治療戦略を見直すため,成因別に治療の実態を解析した.【方法】全国調査に登録の2010~11年発症の急性肝不全491例及びLOHF17例を対象とした.【結果】1)副腎皮質ステロイド:昏睡型の投与頻度はAIHが96%と高く,B型急性感染とキャリア(誘因無)は共に71%,de novo肝炎62%,薬物性62%,成因不明53%だった.非昏睡型でもAIH 96%,薬物性と成因不明は48%,56%で昏睡型と差はなかった.2)血漿交換:昏睡型ではA型100%,B型急性感染85%,キャリア(誘因無)86%,成因不明83%,AIH73%,薬物性69%と高率だが,キャリア(再活性化)57%,de novo肝炎は31%と低率だった.非肝炎は薬物中毒71%,代謝性67%で,非昏睡型はAIH 17%,成因不明15%,薬物性13%で実施された.3)血液濾過透析:昏睡型ではB型急性感染90%,キャリア(誘因無)93%,A型75%,成因不明72%,キャリア(再活性化)71%,AIH 64%,薬物性55%で実施されたが,de novo肝炎は23%と低率だった.非肝炎も薬物中毒86%,循環障害80%と高率だった.非昏睡型ではAIH,薬物性及び成因不明で各13%で実施された.4)抗凝固療法:B型キャリア(誘因無)と同(再活性化)が共に57%,薬物性41%,AIH46%でこれらはDICの合併頻度とほぼ同率だった.成因不明,de novo肝炎のDIC合併は48%,54%に対し,治療実施は37%,23%と低率だった.非肝炎例のDIC合併率も50%を超えたが,抗凝固療法の実施は40%以下だった.5)肝移植:B型急性感染37%,キャリア(誘因無)20%,薬物性25%,AIH21%,成因不明33%で,A,C,E型,de novo肝炎の移植はなかった.【結論】AIH,薬物性及び成因不明例は,昏睡出現前からステロイド投与に加え,人工肝補助が開始され,肝移植も比較的高率だった.一方,成因不明,de novo肝炎及び非肝炎ではDICの合併頻度に比して抗凝固療法の実施率が低く,合併症の治療の標準化が予後改善に繋がる可能性がある. |
索引用語 |
急性肝不全, 人工肝補助 |