セッション情報 ワークショップ2(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

急性肝不全の予後改善に向けた病態理解と治療の進歩

タイトル 肝W2-2:

急性肝不全の成因と病態に応じた内科的治療経験

演者 姜 貞憲(手稲渓仁会病院・消化器病センター)
共同演者 松居 剛志(手稲渓仁会病院・消化器病センター), 横山 健(手稲渓仁会病院・ICU)
抄録 【目的】急性肝不全(ALF)の成因,病態,治療成績をretrospectiveに検討し新たな治療戦略を展望すること.【方法】99年4月から13年3月までに診療した,ALF症例を対象に,1)成因,2)病態,3) 内科的治療内容と肝移植を含む治療成績を検討した.【成績】)1)過去15年間に診療したALFは,103例(男51女52例,年齢中央値49[16-86]歳)で,成因はvirus性48(46.6%), 循環障害13(12.6%), AIH 10(9.7%), 薬物性8(7.8%), 代謝性4(3.9%), 悪性腫瘍肝浸潤2(1.9%), 成因不明18(17.4%)例であった.virus性はHBV 24(再活性化4), HEV 17, HAV 5, 他2例であった.2) 昏睡型は48(急性18,亜急性28,LOHF2)例で,成因はvirus性 22(45.8%), AIH 7 (14.6%), 薬物5(10.4%), 代謝性3(6.3%), 悪性腫瘍2(4.2%), 循環障害1(2.1%), 不明8(16.7%)例で,非昏睡型よりAIHが多く循環障害が少なかった(p<0.05).virus性はHBV 17(再活性化4), HEV 4, HCV1例で,非昏睡型に比してBが多かった(p<0.001).3) virus性ALF48例中HBV起因24例全例にNucs,6例にIFN,HEV1例にRBVを投与した.mPSLパルス療法とCyclosporin A(CsA)投与は各々,Virus性38例,40例で,AIHでは9,4,成因不明15, 10,薬剤アレルギー(n=3)2,2例で行われた.以上の肝炎由来ALF79例のうち非昏睡型39例中37例(94.9%),昏睡型40例中20例(50%)が内科的に救命され,後者8例で肝移植が施行され5例が救命された.循環障害13例は集中治療で12例が,acetaminophen中毒5例はNAC投与で全例救命された.HBV再活性化4例,悪性腫瘍肝浸潤2例は死亡した.なお,昏睡型49例中43例(87.8%)でHDFが施行され39例(90.7%)で覚醒を得た.最終的に,ALF非昏睡型55例中52例(94.5%,内科治療),昏睡型48例中28例(58.3%,内科22, 肝移植6)が救命された.【結論】非昏睡型では内科治療で良好な成績が得られた.昏睡型では覚醒が救命の必要条件で,mPSL総投与量,感染監視,移植移行の迅速化に成績向上の余地があり,成因不明におけるAIH非典型例の検討が求められる.
索引用語 急性肝不全, 治療