セッション情報 ワークショップ2(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

急性肝不全の予後改善に向けた病態理解と治療の進歩

タイトル 消W2-3追:

当院における急性肝不全の検討

演者 町田 展章(板橋中央総合病院・消化器科)
共同演者 市川 武(板橋中央総合病院・消化器科), 田和 良行(板橋中央総合病院・消化器科)
抄録 【目的】2011年に厚生労働省より急性肝不全の新たな診断基準が作成されたことを受け,その診断基準に該当する,当院の急性肝不全症例について検討した.【方法】当院において2005年1月1日から2012年12月31日の8年間に,急性肝不全の診断基準を満たした症例の患者背景,成因,治療内容,救命率について検討した.【成績】過去8年間で急性肝不全の診断基準を満たした症例は23例認め,遅発性肝不全は1例認めた.急性肝不全は男性16例,女性7例,年齢中央値は51歳(23-87歳)であった.昏睡型は7例,非昏睡型は16例認め,昏睡型は,急性型が3例,亜急性型が4例であった.成因は薬剤性8例,B型肝炎6例(急性感染例4例,キャリア例2例),自己免疫性肝炎2例,循環障害2例,E型肝炎1例,成因不明2例であった.治療は,成因による差は目立たず,重症度に応じた治療の差を認め,昏睡型では全例ステロイド投与が施行され,7例中5例に血漿交換が施行されたことに対して,非昏睡型では,16例中9例にステロイド投与が施行され,人工肝補助療法は1例も施行されなかった.B型肝炎に関しては核酸アナログ4例,インターフェロン2例,安静と補液のみが2例であった.死亡例は6例認め,全例昏睡型であった.急性肝不全全体の救命率は73%(17/23例)で,急性肝不全昏睡型の救命率は15%(1/7例)であった.岩手医科大学の劇症化予知式による予測劇症化率は昏睡型の平均が60.7%(16-89),非昏睡型の平均が16.7%(3-65)であった.MELD-Naスコアは昏睡型の平均が41.7(34-58),非昏睡型の平均が21.1(12-31)であった.【結論】急性肝不全非昏睡型には安静と輸液のみで治癒した軽症例も含まれ,死亡例は認めず予後は良好であったのに対して,昏睡型では救命率は低率であった.B型肝炎の症例では,急性感染例4例は全て非昏睡型で,そのうち2例は抗ウイルス療法なしに自然治癒し,軽症であったが,キャリア例2例はいずれも昏睡型の亜急性型で,重症であった.
索引用語 急性肝不全, 劇症肝炎