セッション情報 ワークショップ2(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

急性肝不全の予後改善に向けた病態理解と治療の進歩

タイトル 消W2-4:

急性肝障害の昏睡発現予知におけるProthrombin index slopeの有用性の検討

演者 小野寺 美緒(岩手医大・消化器・肝臓内科)
共同演者 滝川 康裕(岩手医大・消化器・肝臓内科), 鈴木 一幸(岩手医大・消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】急性肝障害では,発症早期の予後予測が治療方針を決定する上で重要である.我々はこれまで,北東北の急性肝障害登録・患者搬送システム(登録システム)を構築し,重症化の可能性のある急性肝障害患者を早期に専門施設に搬送し,昏睡発現予防治療を検討してきた.Prothrombin index slope(PTS)は,急性肝不全の発症早期の段階で予後予測・肝移植適応の決定に有用として報告されている新しい係数である(B. Nalpas, et al. Gut 2012; 61: 1098-1100.).今回我々は,急性肝障害の発症早期PTSが昏睡発現予知に応用できる可能性を検討したので報告する.【方法】対象は登録システムに登録された急性肝障害のうち経過中にプロトロンビン時間(PT)<80%を示し連続して経過を追うことのできた最近の50例である.PT<80%を示した時点(PT0)と24時間後(PT24)・48時間後(PT48)・72時間後(PT72)のPT%からPTS((PThr-PT0)/PT hr)を求め,昏睡発現の有無との相関をMann-Whitney検定を用いて検討した.【成績】男性:女性=26:24,成因はHBV11例,自己免疫性肝炎5例,アルコール性5例,薬物性4例,HEV4例,HAV2例,循環障害2例,代謝性1例,成因不明16例であった.PTShrの中央値は,昏睡発現例,非発現例の順にそれぞれ,PTS24= 0.013,-0.050,PTS48= -0.020,0.020, PTS72= 0.069,0.165で,いずれも有意差を認めなかった.【結論】今回の検討でPTSによる急性肝障害の昏睡発現予測は困難であることが示された.PTは一般病院で簡便に検査できる指標であり,今後PTSの有用性を病型や経過に着目して検討していく必要がある.
索引用語 Prothrombin index slope, 急性肝障害