セッション情報 ワークショップ2(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

急性肝不全の予後改善に向けた病態理解と治療の進歩

タイトル 肝W2-6:

急性肝不全患者における日和見感染―発生頻度とその予測について―

演者 新井 誠人(千葉大・消化器内科)
共同演者 神田 達郎(千葉大・消化器内科), 横須賀 收(千葉大・消化器内科)
抄録 【目的】我々は,急性肝不全治療中に発生した日和見感染例3例を以前報告した(Clin J Gastroenterol 2009).日和見感染の診断や治療は近年飛躍的に向上したが,重篤な感染は肝再生の妨げとなり,肝移植も困難となる.急性肝不全治療時の日和見感染の特徴を明らかにすることを目的とした.【対象】2007年1月から2012年12月までの6年間に入院した劇症肝炎および急性肝炎85例を対象とした.重症例あるいは重症化の恐れが高い症例に対して,ステロイドパルス(Pulse,mPSL 1000mg 3日間),改善なければセミステロイドパルス(SemiP,500mg 3日間),ミニステロイドパルス(MiniP,250mg 3日間)を行った.自己免疫性肝炎が成因と考えられる場合は,ステロイド投与を継続した.日和見感染の診断は,血液,画像検査などにより,総合的に診断し,年齢,性別,成因,入院時の肝機能(PT時間,ALT,T-Bil),ステロイドの投与形式(Pulse+SemiP+MiniP / Pulse+SemiP / Pulse 単独/ Pulse等+PSL継続投与/通常量PSL),脳症,生命予後との関連を多項ロジスティック回帰解析で検討した.【成績】85症例のうち,22例が劇症肝炎.予後は,死亡19例,生存59例,生体肝移植7例.14例(全体の16.5%,ステロイド投与例の29.2%)で日和見感染症を認め,全例ステロイドの投与がなされていた.ステロイドの投与形式はそれぞれ15/5/8/12/8例で,投与開始後平均34日目(9-87日)に,日和見感染を発症した.内訳は,PCP/CMV/アスペルギルス/クリプトコッカス/ノカルジアがそれぞれ9/8/4/1/1例(重複あり).ステロイド投与例での日和見感染発症に関する因子として,高齢(中央値54歳以上,オッズ比7.7 95%CI 1.5-39.3),男性(オッズ比10.7 95%CI 2.0-58.2)があげられた.【結論】急性肝不全治療において,ステロイド投与例では日和見感染が数多くみられた.特に,高齢,男性例での発症が多く,ステロイドの適正使用と的確なスクリーニング検査による感染の早期発見および治療が重要である.
索引用語 日和見感染, 急性肝不全