セッション情報 ワークショップ2(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

急性肝不全の予後改善に向けた病態理解と治療の進歩

タイトル 外W2-9:

劇症肝炎に対する肝移植の治療経験

演者 大野 康成(信州大・消化器外科・移植外科)
共同演者 池上 俊彦(信州大・消化器外科・移植外科), 宮川 眞一(信州大・消化器外科・移植外科)
抄録 【背景】2011年の急性肝不全研究会の集計では急性肝不全の内科的治療による救命率は急性型31.7%,亜急性型19.4%,一方,肝移植での救命率は61.5%と比較的良好である.【対象・治療】劇症肝炎の肝移植適応ガイドラインに基づいて,内科的治療で意識レベルの改善がなく不可逆的な脳障害や真菌感染などの重症感染症のない症例を劇症肝炎に対する肝臓移植の適応としている.肝移植を施行した劇症肝炎27例で背景及び治療成績を検討した.【結果】脳死肝移植1例,生体肝移植26例,男性11例女性16例,平均16.8歳.原因は,不明19例,B型肝炎5例,薬剤性3例で,急性型6例,亜急性型21例.日本急性肝不全研究会のガイドラインで評価すると脳症出現時には1例を除いて適応があり,脳症出現後5日後の再評価では評価可能であった全例で適応があった.脳症出現時に適応外であった1例は急速に病態が悪化し発症4日で肝移植を行った.また,2008年に改訂された肝移植適応基準スコアリング(ガイドライン)では1例を除き死亡予測となる5点以上であった.脳症出現から肝移植までの期間は24±23日で,全例全肝摘出後に同所性肝移植を施行した.死亡例5例の術後生存期間および死因は15日で肝動脈血栓症,51日で多臓器不全,201日で肝不全,247日で薬剤性溶血性貧血,12.8年目に敗血症・DICであった.生存例1例に重篤な脳障害を,1例にコンプライアンス不良による肝炎を認めた.急性型・亜急性型の5年生存率は60%及び90.5%で全体の5年累積生存率は84.6%であった.【結論】劇症肝炎に対する肝移植成績は良好であった.急性肝不全の場合には内科と移植外科と緊密に連携をとり,肝移植を考慮に入れた内科管理,脳症が出現することを想定した脳死肝移植登録,生体肝移植の速やかな準備が救命率の向上に寄与する可能性があると思われた.
索引用語 劇症肝炎, 肝移植