セッション情報 ワークショップ2(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

急性肝不全の予後改善に向けた病態理解と治療の進歩

タイトル 肝W2-10:

当施設における急性肝不全に対する肝移植治療

演者 武市 卒之(熊本大附属病院・小児外科・移植外科)
共同演者 阿曽沼 克弘(熊本大附属病院・小児外科・移植外科), 猪股 裕紀洋(熊本大附属病院・小児外科・移植外科)
抄録 (はじめに)急性肝不全に対する内科的治療成績は,向上しているものの,まだその致命率は高く,肝移植が必要な症例が多い.その一方で,移植に至った場合,ドナー(脳死,生体),レシピエントの予後など問題点も多いのが現状である. (目的)当施設での急性肝不全に対する肝移植の成績を提示し特にその死亡症例につき検討を行った.(対象と方法)2013年2月までに急性肝炎に対して当科で生体肝移植を施行した41例および脳死肝移植1例を対象とした.対象患者の内訳は,成人26例,小児16例で,男:女=18:24であった.急性肝不全の原因は,B型肝炎4例,AIHが強く疑われたもの4例,Wilson病2例,薬剤性が強く疑われたもの5例,原因不明が27例であった.(結果)全体の成績は,患者生存率で1年78%,5年69%,10年62%であった.成人,小児別では成人1年76%,5年67%,10年58%,小児1年80%,5年72%,10年72%であった.死亡例は12例であり,時期別では移植後早期8例,晩期4例,年齢別では,小児4例,成人8例であった.それぞれの死因は,早期8例では,肝不全2例,感染症3例,心不全1例,多臓器不全2例で,晩期4例では,再移植後の脳出血2例,慢性拒絶1例,血液疾患1例であった.死亡症例について,原因疾患による有意差は認めないものの,術前のICU滞在期間が長い症例に予後不良の傾向があった.(まとめ)当施設での急性肝不全に対する肝移植の成績は比較的良いが,晩期になっても死亡する症例も見られ,今後,移植時期,適応,長期followも含め十分検討する必要があると考えられた.
索引用語 急性肝不全, 肝移植