セッション情報 |
ワークショップ2(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)
急性肝不全の予後改善に向けた病態理解と治療の進歩
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タイトル |
肝W2-13追:急性肝炎における酸化ストレス度の意義
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演者 |
遠藤 啓(岩手医大・消化器・肝臓内科) |
共同演者 |
及川 寛太(岩手医大・消化器・肝臓内科), 滝川 康裕(岩手医大・消化器・肝臓内科) |
抄録 |
【目的】これまで我々は,慢性肝疾患では潜在的抗酸化能が低い状態にあることを報告した.急性肝炎の病態進行過程においても,活性酸素種(ROS)が関与している.ROSの攻撃により,抗酸化物質が低下し,エネルギー源も枯渇することにより,肝臓は多大な酸化ストレスを被ることになる.今回我々は,急性肝炎における酸化ストレス度の関与を明らかにするため検討したので報告する.【方法】対象は,2011年4月から2012年12月に当科を受診し,急性肝炎と診断された32例(男性15例,女性17例 52.8歳[42.7-64.2]).成因はHBV10例,HEV3例,HAV1例,薬剤性4例,AIH5例,成因不明7例,その他のウィルス2例,Wilson病1例であった.酸化ストレス度の測定は自動分析装置FRAS4(WISMERLL)を用い,酸化ストレス度 (d-ROM Test:Reactive Oxygen Metabolites: U,CARR)と抗酸化力(BAP: Biological Antioxidant Potential: μmol/L),また潜在的抗酸化能の指標である修正BAP/d-ROM比を測定した.【成績】d-ROMは,健常者(297 U,CARR [255-320])と比較し,急性肝炎(264 U,CARR [178-335])では有意に低値であった.BAPは健常者(2030μmol/L [1983-2198])と急性肝炎(1977μmol/L [1758-2129])で低い傾向を認めるが,有意差はみられなかった.修正BAP/d-ROM比は健常者(0.949[0.85-1.09])と比較し,急性肝炎(1.29[0.77-1.51])で有意に高値であった.また,修正BAP/d-ROM比とPT%,γGTPで有意な負の相関,T-Bilは正の相関を認めた.【結論】急性肝炎では潜在的抗酸化能の亢進がみられた.急性肝炎は複雑な病態を呈し,様々な治療が行われるため一概には言えないが,酸化ストレス系の把握は病態理解の一因となる可能性がある. |
索引用語 |
酸化ストレス, 急性肝炎 |