セッション情報 |
ワークショップ2(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)
急性肝不全の予後改善に向けた病態理解と治療の進歩
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タイトル |
肝W2-14:急性肝不全の病態形成におけるGab1の意義:治療標的としての可能性について
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演者 |
古田 訓丸(大阪大大学院・消化器内科学) |
共同演者 |
吉田 雄一(大阪大大学院・消化器内科学), 竹原 徹郎(大阪大大学院・消化器内科学) |
抄録 |
【目的】急性肝不全の原因のうち,アセトアミノフェン (APAP) の過剰服用は先進諸国においてその多くを占める.APAP による肝不全では,酸化ストレスを介した広範な肝細胞壊死とそれに伴う無菌性炎症がその病態形成に深く関与しているが,その制御機構は明らかでない.一方で我々は,これまでアダプター蛋白質 Grb2-associated binder 1 (Gab1) がマウス胚の初期発生及び部分肝切除後の肝再生において重要な役割を担うことを報告してきた.そこで今回,新規治療標的としての可能性を踏まえ,APAP マウス急性肝不全モデルにおける同分子の役割について検討した.【方法】肝細胞特異的 Gab1欠損マウス (KO) と対照マウス (WT) を比較した.KO及びWTに対し APAP; 250 mg/kg 体重を腹腔内投与し,1) 生存率 2) 肝障害 (血清ALT値,H&E染色,TUNEL染色) 3) 血清 HMGB-1 4) 炎症性サイトカイン 5) 肝内シグナル伝達 6) 肝内酸化ストレスにつきそれぞれ評価した.【成績】1) APAP投与72時間におけるKOの生存率は 25% (3/12) であり,WTの 75% (9/12) に比し有意に低下した (Log-rank,p<0.05).2) KOではWTに比し APAP投与後6時間の血清 ALT 値が有意に高値であり (6650 U/l vs 3605 U/l),障害肝における壊死領域が有意に増大 (74% vs 53%),肝組織TUNEL陽性細胞が 2.2 倍と有意に増加していた.3) KOではWTに比し損傷関連分子パターンの一つである HMGB-1 が投与3時間後の血清中において 2.4 倍と有意に増加していた.4) KOではWTに比し APAP投与後6時間における全肝組織中 IL-6, IL-1β の遺伝子発現が各々 1.87 倍,1.74 倍と有意に増加しており,それらの血清中濃度も上昇していた.5) KOではWTに比し,障害肝における ERK,AKT のリン酸化が減弱していた.6) APAP投与後,肝内グルタチオンは枯渇し脂質過酸化が亢進したが,両群間でこれらの差を認めなかった.【結語】肝細胞 Gab1 は,酸化ストレスを介した肝細胞壊死を制御する鍵分子として機能している可能性が示唆された. |
索引用語 |
Gab1, アセトアミノフェン |