セッション情報 ワークショップ3(肝臓学会・消化器病学会合同)

肝疾患におけるGWAS研究と実臨床へのインパクト

タイトル W3-基調講演2:

IL28B遺伝子によるC型肝炎の治療効果予測と,第二の関連遺伝子の探索

演者 西田 奈央(国立国際医療研究センター・肝炎・免疫研究センターDELIMITER東京大大学院・人類遺伝学)
共同演者 徳永 勝士(東京大大学院・人類遺伝学), 溝上 雅史(国立国際医療研究センター・肝炎・免疫研究センター)
抄録 【目的】ゲノムワイド関連解析(GWAS)により同定されたC型肝炎の治療効果の予測因子であるIL28B遺伝子の3剤併用療法に対する治療効果予測率を明らかにするとともに,さらなる治療効果予測率の向上を目指して,第二の関連遺伝子の同定を本研究の目的とする.【方法】日本人HCV患者群895検体(2剤併用療法の治療無効(NVR)例321検体,SVRやTVRが得られた治療有効例574検体)を対象としてGWASおよびReplication解析を実施した.NVR群118検体とVR群140検体を用いたGWASにより,新たに検出された候補遺伝子領域を対象としてReplication解析を行った.また,IL28B遺伝子の遺伝子パスウェイ(KEGG)や遺伝子間相互作用(BioGRID)で選択された遺伝子領域を候補遺伝子領域に加えた.【成績】GWASの結果,IL28B遺伝子(rs8099917)が最も強い関連を示すことを確認した(P=9.6 × 10-18, OR=7.62).IL28B遺伝子の他にゲノムワイド有意水準を満たす遺伝子領域は検出されなかったが,P<10-4を満たした16か所の遺伝子領域をReplication解析の対象に選択した.遺伝子パスウェイや遺伝子間相互作用で選択された27か所の遺伝子領域を加えてReplication解析を実施したが,いずれの候補遺伝子も再現はされなかった.IL28B遺伝子による3剤併用療法の治療効果予測を前向き治療で実施したところ,メジャーホモとなった120例の患者群のうち109例においてITT解析でSVR12が得られることが明らかとなった.【結論】C型肝炎の治療効果を予測するIL28B遺伝子以外の新規の遺伝要因は同定できなかった.IL28B遺伝子のSNPだけでは説明のできない症例に特有のゲノム構造異常を探索するために,高速シークエンサーを用いたゲノム構造の詳細な解析を実施することが必須と考えられる.
索引用語 GWAS, IL28B