抄録 |
近年,欧米人を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)により,PBC疾患感受性遺伝子としてHLA領域の遺伝子多型の他に,IL12/IL12Rシグナル伝達,TLR/TNFα-NFkBシグナル伝達,B細胞の成熟・分化,上皮細胞の分化・アポトーシスなどに関連する計21の遺伝子多型が報告された.今回,国立病院機構肝ネットワーク研究班,厚生労働省難治性疾患克服研究事業“難治性の肝胆道疾患に関する調査研究班”で登録されたPBC 1,327名と健常者1,120名のDNA検体を用いてGWASを実施し,日本人のPBC発症に関わる新規疾患感受性遺伝子を2個(TNFSF15, POU2AF1)同定した.一方,欧米人の疾患感受性遺伝子の約半数の遺伝子(CD80, IKZF3, IL7R, NFKB1, STAT4, TNFAIP2, CXCR5, MAP3K7IP1, rs6974491, DENND1B)が日本人でもPBCの疾患感受性遺伝子であることが確認された.このように日本人と欧米人PBCとの間には疾患感受性遺伝子に集団差を認めるものの,その多くが同一の免疫応答経路に位置しており,T リンパ球のTh1への分化(TNFSF15, IL12A /IL12RB2, STAT4)経路,Bリンパ球の形質細胞への分化(POU2AF1, IKZF3, SPIB)経路のPBC発症における重要性が示唆された.また,TNFSF15のリスクアレルはTNFSF15mRNA発現を増加させること,PBC患者では血中TNFSF15や肝局所におけるTNFSF15mRNAが発症早期より増加していること,胆管細胞にはTNFSF15が高発現していることなどからTNFSF15がPBCの病態形成へ直接関与している可能性が示唆された. |