セッション情報 ワークショップ3(肝臓学会・消化器病学会合同)

肝疾患におけるGWAS研究と実臨床へのインパクト

タイトル 肝W3-4指:

ゲノムワイド関連解析によるC型肝硬変/肝癌の感受性遺伝子の同定

演者 室山 良介(東京大医科学研究所・先端ゲノム医学)
共同演者 松田 浩一(東京大医科学研究所・ヒトゲノム解析センター), 加藤 直也(東京大医科学研究所・先端ゲノム医学)
抄録 【背景】肝炎ウイルスによる慢性肝炎(CH)・肝硬変(LC)・肝細胞癌(HCC)への病態進展には著しい個人差が存在し,その個人差には一塩基多型(SNP)に代表される宿主因子が関与している.ゲノムワイド関連解析(GWAS)はSNPを足がかりとして疾患・治療感受性遺伝子の同定を網羅的に行う手法であり,さまざまな領域で多大な成果を挙げている.現在までに我々はGWASを用い,C型肝炎ウイルス(HCV)による肝硬変/肝癌の感受性遺伝子の同定を試みてきた.【方法】GWASでは,LC(LC:682例,CH:1045例),HCC(HCC:721例,健常者:2890例)を対象として候補SNPsを抽出した.抽出した候補SNPsに対し,LC(LC:936例,CH:3809例),HCC(HCC:673例,HCV非感染者:2596例)を対象として追試を行った.【成績】LC,HCCともにp<1×10-5を示す8SNPsをGWASにて抽出し,追試を行った.その結果,LCではHLA遺伝子近傍の2SNPsがLC関連SNPsとして同定され(SNP1:p=9.15×10-11,OR=1.46;SNP2:p=1.45×10-10,OR=1.37),ともにHLA-DQA/DQB1/DRB1の発現量との関連性が示唆された.一方,HCCではMICA遺伝子の上流に位置するSNPがHCC関連SNPとして同定され(p=4.21×10-13,OR=1.39),血液中MICA濃度との相関が認められた.【結論】GWASを用いてHCVによる肝硬変/肝癌の感受性遺伝子を同定した.C型肝炎においては,肝硬変進展には獲得免疫が,肝発癌には自然免疫が重要な役割を担っていると考えられた.同定されたSNPsはLC進展/HCC発癌を予測する有用なバイオマーカーとしてだけでなく,魅力的な治療ターゲットになると期待される.
索引用語 GWAS, C型肝炎ウイルス