セッション情報 ワークショップ3(肝臓学会・消化器病学会合同)

肝疾患におけるGWAS研究と実臨床へのインパクト

タイトル 肝W3-5:

肝細胞癌における宿主および腫瘍のゲノムワイド解析

演者 三木 大樹(理化学研究所・統合生命医科学研究センター・消化器疾患研究チームDELIMITER広島大・消化器・代謝内科)
共同演者 越智 秀典(理化学研究所・統合生命医科学研究センター・消化器疾患研究チームDELIMITER広島大・消化器・代謝内科), 茶山 一彰(理化学研究所・統合生命医科学研究センター・消化器疾患研究チームDELIMITER広島大・消化器・代謝内科)
抄録 【目的】C型慢性肝炎からの肝発癌過程においていまだ十分に解明されていない遺伝的要因の関与を明らかにするため,宿主ゲノムの一塩基多型(SNP)を網羅的に調べるGWASおよび腫瘍の全ゲノムシークエンスの手法を用いて,検討を行った.【方法】1)55歳以上のC型慢性肝炎977例(HCC合併有212例,HCC合併無765例)を対象としてゲノムワイドSNP genotypingを行い,HCC合併との関連を解析した.C型慢性肝炎2335例(HCC合併有710例,HCC合併無1625例)で追試研究を行い,他の危険因子との関係についても解析した.2)GWASで同定された遺伝子多型について,B型慢性肝炎症例(HCC合併有278例,HCC合併無954例),さらに健常人943例のアレル頻度を検討した.3)国際がんゲノムコンソーシアムのプロジェクトの一環として,癌特異的なゲノム変異を同定する目的で,共同研究機関において次世代シーケンサーによるHCCの全ゲノムシークエンスを行い,解析した.【成績】1)GWASと追試研究の結果,DEPDC5遺伝子多型がHCC合併と有意に関連していた(P = 1.27×10-13,オッズ比1.75).層別解析を行うと,男性,65歳以上,血小板数10万/μl未満といったHCC発症リスクが高いと予測される集団において,SNPの効果(オッズ比)が高い傾向にあった.HCVのgenotype間では効果の差は見られなかった.IFN治療例に限定した解析では,非SVR症例においては有意な関連を認めたものの,SVR症例においては関連を認めなかった.2)DEPDC5遺伝子多型のアレル頻度は,C型慢性肝炎症例,B型慢性肝炎症例,健常人において同等であった.HBV慢性感染者におけるHCC合併との関連は認められなかった.3)HCV関連の多中心性発癌の2例では,同一症例の各腫瘍間でゲノム変異のパターンが全く異なっていた.【結論】多因子疾患であるHCCにおいて,宿主遺伝情報の臨床応用を考える際には,集団ごとでの効果の違いや他の危険因子との相関も含めた慎重な検討が必要であると思われる.
索引用語 GWAS, HCC