セッション情報 ワークショップ3(肝臓学会・消化器病学会合同)

肝疾患におけるGWAS研究と実臨床へのインパクト

タイトル 肝W3-6:

C型肝発癌におけるMICA,DEPDC5,IL28B 遺伝子多型の意義の検討

演者 前川 伸哉(山梨大・1内科)
共同演者 坂本 穣(山梨大・1内科), 榎本 信幸(山梨大・1内科)
抄録 【目的】近年,C型慢性肝炎における治療感受性あるいは病態進展にIL28B,MICA,DEPDC5のSNPが関与することが報告された.一方,これらの意義について不明な点も多く,臨床像がどのように特徴づけられるのか十分に明らかとはいえない.【方法】上記3 SNPを検索したC型慢性肝疾患1251症例においてGenotype1b, HCV-RNA陽性391例(CH,N254;LC,N 47;HCC,N 114)を対象に,SNPと肝疾患の臨床的特徴についてcross-sectionalに,発癌リスクについてlongitudinalに検討した.【成績】MICAのHCCリスクアレルであるアレルA保有率は,CH(149/255,58%),LC(28/45,62%),HCC(59/90,65%)と有意差を示すには至らないものの(p=0.2),肝病態の進展に伴い高まる傾向を示し,またALT高値,血小板低値,アルブミン低値傾向を呈し,特にAFP(p=0.09)においてその傾向が強かった.HCC発症においてもアレルA群で発症しやすい傾向であった(p=0.2).DEPDC5においてHCCリスクアレルであるアレルG保有率はCH(61/193, 31%),LC(14/46, 30%),HCC(25/89, 29%)となり,進展による明らかな違いを認めず,各種臨床因子やHCC発症においても明らかな関連を認めなかった.一方,IL28BにおけるアレルG保有群はCH(76/255, 30%),LC(17/46, 37%),HCC(28/90, 31%)と進展による差を認めず,HCC発症においても明らかな差は認めなかった.臨床的因子の検討ではアレルG保持者にALT,血小板,アルブミン,AFP,コレステロールに明らかな差を認めないものの,顕著にG-GTP高値(p=4.7E-07)であった.【考案及び結語】C型慢性肝疾患におけるMICA,DEPDC5,IL28B SNPの関与について検討した.病態との関連は必ずしも強くはないものの,特にMICAについては病態進行,肝発癌と関連する傾向を認めた.今後これら因子の基礎的理解をさらに深めることによって,バイオマーカーとしての有用性が確立される可能性が考えられた.
索引用語 C型肝発癌, SNP