セッション情報 ワークショップ4(消化器病学会・消化吸収学会合同)

過敏性腸症候群の診療における現状と問題点

タイトル 消W4-1:

シネMRIは小腸内細菌異常増殖症候群(SIBO)を呈するIBS患者を指摘できるか?

演者 大久保 秀則(横浜市立大大学院・分子消化管内科学)
共同演者 中島 淳(横浜市立大大学院・分子消化管内科学), 千葉 俊美(岩手医大・消化器・肝臓内科)
抄録 【背景】過敏性腸症候群(IBS)の病態生理は多因子性で混沌としているが,細菌感染がトリガーとなるいわゆるPost-infectious IBSが近年注目されるようになった.特に小腸蠕動低下に起因するSmall intestinal bacterial overgrowth(SIBO)とIBSとの関連が指摘されている.一方画像診断学的には,manometryやMRIを用いてIBS患者の運動機能異常を指摘する報告が散見される.これまで我々は慢性偽性腸閉塞症(CIPO)の小腸蠕動評価に対するシネMRIの有用性を報告してきたが,今回さらにIBS患者群にシネMRIを追加施行し,小腸蠕動低下からSIBOをきたしているIBS患者が指摘出来るかどうかを検討した.【方法】健常者,IBS患者,CIPO患者各14名に対してb-TFE sequenceでシネMRIを施行した.各症例毎に特定の3部位を選定後,腸管径の経時変化をグラフ化し,平均腸管径,収縮周期,収縮率をendpointとして3群間で統計学的に比較した.【結果】平均腸管径はそれぞれ11.1±1.5mm, 10.9±1.9mm, 43.4±14.1mmとCIPOで有意に他の2群より大きく,健常者とIBS群では差はなかった.収縮率は73.0±9.3%, 74.6±9.4%, 17.1±11.1%とCIPOで有意に他の2群より小さく,健常者とIBS群では差はなかった.一方収縮周期は7.8±1.0s, 7.4±1.0s, 7.9±1.4と3群間で有意差が見られなかった.また一部のIBS患者で小腸拡張と収縮率低下が認められた.【考察】今回の検討で健常者とCIPO患者はシネMRIで完全に鑑別可能であった.また腹部膨満等の類似症状をもつIBS患者とCIPO患者の鑑別にも有用であった.一方健常者とIBS患者の運動機能には有意差は認めないものの,一部のIBS症例では運動異常を示す患者が認められ,これらは腹部膨満感が強い傾向であることからSIBOの可能性も考えられた.SIBOがIBSの原因となるのか,IBSの結果としてSIBOを来たすのかはcontroversialであるが,シネMRIを用いて小腸運動異常をきたす一部のIBS患者を指摘しSIBOの可能性を検討することは,新しい治療法への可能性を開くものである.
索引用語 シネMRI, SIBO