セッション情報 ワークショップ4(消化器病学会・消化吸収学会合同)

過敏性腸症候群の診療における現状と問題点

タイトル 消W4-2:

過敏性腸症候群患者の小腸カプセル内視鏡検査を用いた消化管通過時間と小腸病変の検討

演者 前田 光徳(獨協医大日光医療センター・消化器内科)
共同演者 寺野 彰(獨協学園), 平石 秀幸(獨協医大・消化器内科)
抄録 【目的】上下部消化管内視鏡検査(EGD,CS)で有意な所見のない腹痛,下痢を訴える症例は,通常過敏性腸症候群患者と診断される場合が多い.そこで今回,これら症例に対して小腸カプセル内視鏡検査(CE)を施行し,その小腸病変の有無や消化管通過時間について検討した.【対象と方法】2003年2月から2013年2月までに腹痛,下痢を訴えてEGD,CSにて有意な所見を認めずCEを施行した42症例(IBS群)(平均年齢42.1±15.5歳,男:女=29: 13)を対象とした.比較する症例として,同時期にCEを施行したクローン病患者36症例(CD群)(平均年齢33.7±14.0歳,男:女=31: 5),原因不明消化管出血患者249症例(OGIB群)(平均年齢62.6±16.4歳,男:女=167: 82)を対象とし,消化管通過時間やCE所見,H.pyloriの存在の有無に対して多重比較検定を用い,P<0.05にて有意差ありとした.【成績】消化管通過時間について,平均小腸通過時間は, OGIB群5.39時間(h),CD群4.94h, IBS群4.35hであり,IBSとOGIB群間で有意差を認めた(P<0.05). 平均胃通過時間はOGIB群48.7分(m),CD群102.0m, IBS群59.3mであり,CDとOGIB群間で有意差を認めた(P<0.05).平均食道通過時間は, 3群間に有意差を認めなかった.小腸所見では,IBS群では発赤所見など小腸炎所見を認める症例が64.7%認めた.CD群では97.2%,OGIB群では39.8%であり,各3群間に有意差を認めた(P<0.05).なおH.pyloriの有無については,3群間で有意差を認めなかった.【結論】過敏性腸症候群と診断された患者の中には,小腸通過時間の短縮を認めるものや,小腸炎の存在が関与する可能性が示唆された.
索引用語 過敏性腸症候群, 小腸カプセル内視鏡