セッション情報 ワークショップ4(消化器病学会・消化吸収学会合同)

過敏性腸症候群の診療における現状と問題点

タイトル 消W4-3:

カプセル内視鏡の消化管通過時間と消化器症状の関連性についての検討

演者 小林 由佳(東京大・消化器内科)
共同演者 山田 篤生(東京大・消化器内科), 小池 和彦(東京大・消化器内科)
抄録 【背景・目的】過敏性腸症候群をはじめとする種々の機能性消化管疾患において,小腸の消化管運動がどの程度の消化器症状を惹起するかは不明な点が多い.一方,カプセル内視鏡検査(CE: capsule endoscopy)は,2012年7月以降適応が拡大され,小腸疾患が既知または疑われる場合も保険適応となった.過敏性腸症候群におけるCEの経験は未だ少ないが,今回我々は,CEの胃・小腸通過時間と消化器症状の関連について検討した.【方法】対象は2009年1月から2012年4月までに,当院でCEを施行した原因不明の消化管出血患者(OGIB: obscure gastrointestinal bleeding)で,小腸に有意病変を認めなかった105例(男性62例,62.8 ± 14.9才)である.CE当日に,消化管症状に特異的な尺度であるGastrointestinal Symptom Rating Scale(GSRS)を行った.GSRSは15項目からなり,酸逆流・腹痛・消化不良・下痢・便秘の下位尺度に大別される.スコアは1点(症状なし)~7点(非常に強い)に数値化される.CEの胃・小腸通過時間と各症状のGSRSスコアの関連性について解析した.【結果】GSRSスコアの平均は,酸逆流1.5 ± 0.9,腹痛1.6 ± 0.9,消化不良1.8 ± 0.9,下痢1.7 ± 1.0,便秘2.2 ± 1.3であった.CEの胃通過時間は,いずれの症状でも,スコア高値群(GSRS≧3)と低値群(GSRS<3)の間に有意差を認めなかった.CEの小腸通過時間に関しては,便秘の高値群(GSRS≧3)の方が,低値群より通過時間が長い傾向が見られた(303分 vs 264分,P = 0.07).一方で,下痢の高値群と低値群では,小腸通過時間に有意差を認めなかった(285分 vs 275分,P = 0.61).【結論】OGIB症例での検討では,CEの小腸通過時間は,便秘スコア高値群で長い傾向がみられ,下痢では有意差を認めなかった.機能性消化管疾患の評価に,CEの小腸通過時間が有用である可能性が示唆された.CEが適応拡大となったため,今後過敏性腸症候群におけるCEの経験を蓄積し同様の解析を行いたい.
索引用語 カプセル内視鏡, 消化器症状