セッション情報 ワークショップ4(消化器病学会・消化吸収学会合同)

過敏性腸症候群の診療における現状と問題点

タイトル 消W4-4:

カプセル内視鏡を用いた過敏性腸症候群評価の可能性

演者 柴田 大明(山口大大学院・消化器病態内科学)
共同演者 橋本 真一(山口大大学院・消化器病態内科学), 坂井田 功(山口大大学院・消化器病態内科学)
抄録 【目的】過敏性腸症候群(IBS)はRome3診断基準により評価されるが,症状に依存する割合が大きく,症例により判断に苦慮する場合もある.客観的な消化管運動能の評価が望まれるが,腸管内圧測定は侵襲が大きく実施できる施設も限られているため,すべてのIBS症例に実施するのは難しい.カプセル内視鏡は小腸粘膜面の詳細な観察を低侵襲に行うことを可能とし広く普及している.これまで消化管運動の評価をカプセル内視鏡で行った報告は少なく,本検討においてIBSにおけるカプセル内視鏡を用いた消化管運動能評価の有用性について検討することを目的とした.【方法】2007年11月より2012年12月までに当院にて施行したカプセル内視鏡検査293件のうち,Rome3診断基準により過敏性腸症候群(IBS)と診断された11件をIBS群(下痢型6件,便秘型5件),残りの282件のうち活動性出血,小腸部分切除術後,小腸狭窄,胃内停滞例,アミロイドーシスおよび炎症性腸疾患を除外した149件を対照群として検討した.【成績】検査開始後8時間以内に大腸まで到達した症例の割合は,下痢型IBS群 6/6件(100%),便秘型IBS群 1/5件(20%),対照群 110/149件(73.8%)であり,全小腸観察率は下痢型IBS群で便秘型IBS群に比較して高かった.小腸通過時間が測定できた症例に限って検討したところ,対照群に比較して下痢型IBS群で有意に小腸通過時間が短いことが明らかとなった(下痢型IBS群 平均229分,対照群 平均272分;p=0.04).またカプセル内視鏡画像においてそれぞれの群の残渣の残存を検討したところ,残渣残存率:下痢型IBS群 4/6件(66.7%),便秘型IBS群 5/5件(100%),対照群 104/149件(69.8%)であり,便秘型IBS群では残渣残存率が高い傾向を認めた.【結論】IBSの病態とカプセル内視鏡所見は関連を認め,今後IBS診断や病態評価に有用な検査手技となりうる可能性が示唆された.
索引用語 過敏性腸症候群, カプセル内視鏡