セッション情報 ワークショップ4(消化器病学会・消化吸収学会合同)

過敏性腸症候群の診療における現状と問題点

タイトル 消W4-6:

下痢型過敏性腸症候群患者における出雲スケールによるQOLスコアと血中活性型GLP-1濃度との関連

演者 伊藤 実(久留米大・消化器内科DELIMITER久留米臨床薬理クリニック)
共同演者 川口 巧(久留米大・消化器内科), 佐田 通夫(久留米大・消化器内科)
抄録 【目的】機能性消化管障害(FGIDs)は,多彩な消化器症状を呈する.消化器症状には様々な原因が考えられているが,近年,消化管ホルモンも関与すると考えられている.Glucagon-like peptide-1 (GLP-1)は下部消化管のL細胞より分泌される消化管ホルモンであり,糖代謝異常のみならず回腸末端でのileal brakeなど消化管運動に関与する.本研究ではFGIDs患者を対象に消化器症状と血漿中の活性型GLP-1濃度との関連を検討した.
【方法】2011年3月から2012年12月の間,当院外来に消化器症状を主訴に来院し,GERD, FD, IBSのRome III基準に合致し,器質的疾患を認めないFGIDs患者32名 (年齢: 55.8 ± 16.6歳,男女比1:1,BMI: 22.7 ± 4.0,HbA1c: 6.0 ± 0.3 %) を対象とした.QOLを出雲スケールにて評価するとともに,空腹時に各種血液生化学的検査を行った.活性型GLP-1測定にはDPP-4阻害薬が添加された専用採血管を使用し,採血後速やかに血漿成分を-80℃で凍結保存した.活性型GLP-1の測定には,YK160 GLP-1 EIAキットを使用した.
【成績】出雲スケールのスコアは,それぞれ胸焼け: 3.1 ± 0.5, 胃痛: 4.1 ± 3.3, 胃もたれ: 4.8 ± 4.7, 便秘 3.2 ± 2.8, 下痢 2.4 ± 3.0であった.また,活性型GLP-1濃度は2.0±1.0 ng/mLであった.血漿活性型GLP-1濃度と消化器症状との相関を検討したところ,胸焼け,胃痛,便秘のスコアでは有意な相関は見られなかった.一方,活性型GLP-1濃度は,胃もたれと有意な正の相関(r2 = 0.20, p = 0.011),下痢と有意な負の相関を認めた(r2 = 0.17, p = 0.021).
【結論】下痢型過敏性腸症候群の症状にGLP-1が関与することが明らかとなり,GLP-1関連製剤も下痢型過敏性腸症候群の治療薬としても期待できることが示唆された.
索引用語 IBS-D, GLP-1