セッション情報 |
ワークショップ4(消化器病学会・消化吸収学会合同)
過敏性腸症候群の診療における現状と問題点
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タイトル |
消W4-7:過敏性腸症候群におけるcorticotropin-releasing hormone投与下大腸刺激時の自律神経反応-局所脳活動異常
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演者 |
田中 由佳里(東北大大学院・行動医学) |
共同演者 |
金澤 素(東北大大学院・行動医学), 福土 審(東北大大学院・行動医学) |
抄録 |
【目的】過敏性腸症候群(IBS)ではcorticotropin-releasing hormone (CRH)が病態を左右すると考えられる.CRH投与下大腸刺激時脳反応がIBSでは異なることを報告した.しかしCRHの自律神経への作用は報告が無い.脳腸相関の観点より,CRH投与下大腸伸展刺激において,IBSは健常者と異なる自律神経反応,対応する脳活動異常を呈するとの仮説を検証した.【方法】対象は健常男性16名,IBS男性16名である.ランダムにCRH投与群(健常者,IBS共にn=8)とplacebo投与群(健常者,IBS共にn=8)に分け比較した.直腸にバロスタットバッグを留置し,偽(0mmHg),低度(20mmHg),高度(40mmHg)大腸伸展刺激をランダムに加えた.更にCRH 2μg/kgあるいは生理食塩水(placebo)を静注し,同様の刺激を加えた.刺激毎にH215Oを静注し,PETによる局所脳血流量を測定した.各刺激時に血中noradrenalineと心電図を測定した.心拍,低周波(LF)・高周波領域(HF)を解析し,LF/HFを求めた.脳画像はSPM8で分析した.【成績】健常者CRH,placebo投与両群,IBS placebo群で,大腸刺激により心拍数とLF/HFが有意に上昇した.一般化線形方程式で,健常者群では有意なCRH×刺激交互作用(p=0.019)を示し,IBSでは有意な刺激効果(p<0.001)のみ認めた.大腸高度刺激時の血漿noradrenaline値は,健常者CRH群,placebo群で,LF/HFと有意な相関を示した(CRH: rho=0.95, p<0.01, placebo: rho=0.91, p=0.002).健常者placebo群でΔLF/HFと共変した局所脳は左背外側前頭前野,背側橋,CRH群では左島だった.IBSではplacebo群で尾状核が共変したが,CRH群では有意な局所脳を認めなかった.【結論】健常者ではCRHによる自律神経反応増強を認めたが,IBSでは脳腸相関の異常を示唆する所見であった. |
索引用語 |
過敏性腸症候群, 脳腸相関 |