セッション情報 ワークショップ4(消化器病学会・消化吸収学会合同)

過敏性腸症候群の診療における現状と問題点

タイトル 消W4-9:

下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)におけるS100タンパク発現とセロトニントランスポーター(5-HTT)遺伝子多型の検討

演者 塩谷 昭子(川崎医大・消化管内科)
共同演者 楠 裕明(川崎医大・総合診療科), 春間 賢(川崎医大・消化管内科)
抄録 【目的】セロトニン,セロトニントランスポーター(5-HTT, SERT, or SLC6A4)遺伝子多型およびセロトニン受容体5-HT1Bに働くS100A10 (p11)がIBS,特に下痢型IBS(IBS-D)の病態に関与していることが報告されている.IBS-DにおけるS100タンパク発現と遺伝子多型についてUCおよび対照群と比較し,臨床症状あるいはQOLとの関連性について,さらにラモセトロン有効群と無効群で比較検討した.【方法】 IBS-D (n=56),UC (n=50),および対照群(n=50)を対象に直腸およびS状結腸より生検を行い,大腸粘膜およびLCMで得られた腸管上皮組織より,RNAを抽出した.RT-PCRによりS100A10,カルプロテクチンを合成するS100A8, S100A9のmRNAの発現を定量化し検討した.血液よりDNAを抽出し,Interleukin-10 (IL-10), 5-HTTおよびTryptophan hydroxylase (TpH)-1遺伝子多型についてPCR-RFLP法あるいはPCRにより検討した.IBS-D 31例に対してラモセトロンを1か月間投与し有効性を評価した.内視鏡検査時およびラモセトロン投与後に,self-rating depression scale(SDS), gastrointestinal symptom rating scale(GSRS),short form-36(SF-36)の問診調査を行った.【成績】IBS-D群はUC群と比較してSDSおよび GSRSのスコアが高く,精神的側面のQOLが有意に低下していた.S100A8,A9の発現はUC群でIBS-D群および対照群と比較して高く,UCの重症度スコアと相関した(p<0.001).直腸S100A10の発現はIBS-D群でUC群・対照群と比較して高く(p<0.01),SDSスコアと正の相関を認めた(p<0.01 ).IL-10-819 CC(high producer) は,IBS-DおよびUC群では対照群と比較して有意に高率であった.ラモセトロン有効群では,無効群と比較して有意に下痢のスコアが高く,5-HTTLPR del(s)ホモ保有者が高率(72% vs 22%, p=0.02)であった.【結論】S100タンパクの遺伝子発現および5-HTT遺伝子多型がIBS-Dの病態および5HT3拮抗薬の効果と関連した.
索引用語 ラモセトロン, セロトニントランスポーター