セッション情報 ワークショップ4(消化器病学会・消化吸収学会合同)

過敏性腸症候群の診療における現状と問題点

タイトル 消W4-10:

ヒマシ油惹起の動物下痢モデルにおけるグァーガム分解酵素産物の効果

演者 鎌田 和浩(京都府立医大・消化器内科)
共同演者 鈴木 建太朗(京都府立医大・消化器内科), 内藤 裕二(京都府立医大・消化器内科)
抄録 【目的】近年,機能性胃腸障害である過敏性腸症候群(IBS)の罹患率は増加しており,その疾患自体は生命を脅かすことはないが,患者のQOLを低下させることが知られている.しかし,IBSの病態,そのメカニズムは依然として不明な点も多く,現状での治療には対症療法を中心とした薬剤が使用されているが,今後さらに有用な薬剤の開発が望まれている.水溶性食物繊維であるグァーガム酵素分解物は,下痢を抑制する事が知られており,人においてもIBSへの有効性も報告されている.今回,われわれは刺激性下剤として知られているヒマシ油により惹起されたラットの下痢モデルを用い,IBSに有効とされるグァーガム分解酵素産物の下痢症状への効果発現のメカニズムを検討した.【方法】固形飼料を継続投与したコントロール群とグァーガム酵素分解物混餌を1週間投与した群にヒマシ油,コントロール群には生理食塩水を投与し,投与後5時間以内の下痢の評価を行った.その後小腸,大腸での炎症所見の評価,局所での神経伝達物質であるCGRP,SubstancePの発現を測定した.【成績】コントロール群では全例に排便個数の増加及び下痢を認めたが,グァーガム分解酵素産物投与群ではいずれも下痢を認めなかった.小腸や大腸の炎症所見は各群で差を認めなかったが,局所での神経伝達物質の発現量はグァーガム分解酵素産物投与群で低下を認めた.【結論】グァーガム分解酵素産物は,ヒマシ油による刺激性下痢を軽減し,その下痢軽減の効果発現には局所の神経伝達物質の発現が関与していることが示唆された.今後,グァーガム酵素分解産物の様な食物繊維などが下痢型IBSへの臨床応用への検討が期待される.
索引用語 大腸, 神経伝達物質