セッション情報 ワークショップ5(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

大腸SM癌に対する内視鏡治療の適応拡大

タイトル 内W5-4:

大腸SM癌-1.000μmの「しばり」における問題点

演者 斎藤 彰一(東京慈恵会医大・内視鏡科)
共同演者 池上 雅博(東京慈恵会医大・病理学), 田尻 久雄(東京慈恵会医大・内視鏡科DELIMITER東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】大腸SM癌で内視鏡切除後,1.000μmを超える浸潤がみられる場合はガイドラインでは追加外科切除を「考慮する」としている.しかしながら1.000μmを超えて,追加腸切除を施行した場合でもリンパ節転移をきたす頻度は低い.以上より適応拡大の可能性につき検討した.【方法】2003年4月~2012年3月に詳細な術前内視鏡観察を行った後,内視鏡的もしくは外科的に切除された180病変(有茎性病変は除外)を選出した.全例,実体顕微鏡下で観察の後,最深部の割面を作製した.内訳は外科切除92病変,内視鏡治療後追加腸切除が施行された25病変,内視鏡治療後経過観察されている63病変である.これらにつきリンパ節転移の有無別に見た平均浸潤距離,肉眼型別にみた平均浸潤距離,内視鏡治療後に経過観察されている病変の平均浸潤距離と平均経過期間について検討を行った.【成績】180病変中リンパ節転移をきたしたものは18病変であった.平均浸潤距離ではリンパ節転移のない群で2478.2μm,リンパ節転移のある(LN(+))群で3932.0μmであった.このうち内視鏡治療後に追加腸切除を行い,LN(+)であったものは4病変であった.うち隆起型3病変で平均浸潤距離は3899.7μm,表面型1病変で1600μmであった.内視鏡治療後に経過観察中である63病変(脈管侵襲・低分化型・印環細胞癌・粘液癌・簇出2,3を認めず)のうち,30病変は1.000μm未満,33病変は1.000μm以深であった.平均浸潤距離は各々490.2μmと2900.5μm,平均観察期間は各々49.9カ月と50.3カ月で,現在まで再発所見は認めていない.【結論】リンパ節転移10病変のうち,最も浅いものは1600μmでありリンパ管侵襲を認めた.浸潤距離以外の因子を認めていないものでは,2250μmであった.当科からの以前の報告で,各因子における多変量解析の結果,脈管侵襲がリンパ節転移に最も関与していた.以上から内視鏡治療後1000μmを超える病変でも,その他の因子がないものは内視鏡治療のみで根治できる可能性が示唆された.
索引用語 大腸SM癌, リンパ節転移