セッション情報 ワークショップ5(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

大腸SM癌に対する内視鏡治療の適応拡大

タイトル 内W5-6:

大腸SM癌のリンパ節転移のリスク因子 ~腫瘍先進部における低分化所見の有用性~

演者 寺門 洋平(札幌厚生病院・1消化器科(胃腸科))
共同演者 今村 哲理(札幌厚生病院・1消化器科(胃腸科)), 市原 真(札幌厚生病院・臨床病理科)
抄録 【背景】大腸癌治療ガイドラインではSM癌のリンパ節(LN)転移のリスクから追加腸切除を考慮する組織学的因子が示されているが,転移のない症例も多数存在しさらなる検証が必要である.【目的】LN転移を来す大腸SM癌の臨床病理学的特徴を明らかにすること.【方法】当院において2000年1月から2013年2月までに内視鏡治療の先行の有無を問わず,LN郭清を伴う手術を行った大腸pSM癌276例を対象とした.対象症例の病理標本を消化管を専門とする病理専門医1名により改めて鏡検し,pSM癌の所属LN転移のリスク因子として大腸癌治療ガイドラインに記載されているSM浸潤度,脈管侵襲(Vas),budding(Bud)の各因子に加えて,腫瘍先進部の低分化胞巣(Por)・低分化所見とLN転移の関係を検討した.なおPorは,「間質浸潤を呈する癌胞巣の中で5個以上の細胞から構成され腺腔形成が乏しい癌胞巣」と定義し,「Porを1個以上有する場合」を陽性と評価した.Budは「grade2」以上を陽性とした.また低分化所見は「Por・Budのいずれかが陽性」の症例を陽性,「Por・Budの双方とも陰性」の症例を陰性と評価した.【結果】LN転移は26例(9.4%)に認めた.単変量解析では,SM浸潤度以外のVas・Bud・Por・低分化所見の4因子が有意であった.「SM浸潤度・Vas・Bud・Por」の4因子での多変量解析ではVasのみが有意な因子,「SM浸潤度・Vas・低分化所見」の3因子での多変量解析ではVas・低分化所見が有意な因子と判断された.またLN転移を認めた26例の検討では,Vasが23例(88.5%)・低分化所見が20例(76.9%)で陽性であったが,Vas・低分化所見の双方ともに陰性の症例は3分割EMR後に追加腸切除を行なった1例のみであった.【考察】 Vasおよび低分化所見はpSM癌のLN転移の予測因子であり,追加腸切除を考慮する因子として有用である可能性が示された. またSM浸潤が予想される症例では,LN転移の予測因子の判定のために,一括切除による病理組織学的検討が必須であることが示唆された.
索引用語 大腸SM癌, リンパ節転移