セッション情報 ワークショップ5(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

大腸SM癌に対する内視鏡治療の適応拡大

タイトル 消W5-7:

大腸SM癌における局所切除の長期予後および適応に関する検討

演者 緒方 俊二(高野病院・消化器外科)
共同演者 山田 一隆(高野病院・消化器外科), 野崎 良一(高野病院・消化器外科)
抄録 【目的】大腸SM癌の局所切除(内視鏡的切除,TEM,経肛門的切除)後の再発転移例の詳細と長期予後を検討すること.および,現在の追加腸切除の考慮項目「浸潤距離1000μ以上」の妥当性を検討すること.【対象,方法】1983年~2007年におけるSM癌590例を対象とした.局所切除(追加腸切除なし)が257例(EMR 222例,TEM 4例,経肛門切除31例),根治手術が333例(うち局所切除後は66例)であった.(1)局所切除後,追加腸切除の適応症例における再発・転移および予後を検討した.(2)リンパ節転移の危険因子から腸切除の適応(特にSM浸潤距離)の妥当性を検討した.【結果,考察】(1)局所切除例の観察期間中央値は55カ月であった.局所切除257例中,追加切除適応例が104例(41%)あり,下部直腸例に多かった.再発転移例は4例であり,追加腸切除の適応症例の累積5年無再発率は94.8%,5年全生存率は94.0%であった.再発部位は局所再発(粘膜)2例,肝再発1例,局所・肝同時再発1例であった.4例はすべてSM浸潤距離1000μ以上であった.局所再発の3例はすべて3年以内であり,内視鏡によるサーベイランスは3年まででよいと思われた.追加腸切除適応例104例中2例が癌死しており,経過観察をする場合は十分なICが必要と思われた.(2) 手術例333例中,28例(8.4%)にリンパ節転移を認めた.リンパ節転移とSM浸潤距離との関係をみると,浸潤距離2000μにて最も有意差を認めた.そこで年齢,部位,形態,腫瘍径,SM浸潤距離(2000μ),組織型,ly,v,budding,低分化包巣(POR)の11項目において単変量解析を行うと,リンパ節転移と相関するものはSM浸潤距離,ly,budding,PORの4因子であった.多変量解析ではbudding(OR 2.5),POR(OR 2.6)の2因子であった.SM浸潤距離1000μ以上の症例298例のうち,ly,budding,PORのいずれも認めない症例は74例(25%)であったが,これらの症例にはすべてリンパ節転移はなかった.すなわち,SM浸潤距離1000μ以上であってもly,budding,PORを認めなければ追加腸切除を省略できると思われた.
索引用語 大腸癌, SM癌