セッション情報 ワークショップ5(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

大腸SM癌に対する内視鏡治療の適応拡大

タイトル 内W5-9:

大腸SM癌に対するESD治療の安全性と病理学的精度管理

演者 吉田 直久(京都府立医大・消化器内科)
共同演者 柳澤 昭夫(京都府立医大・人体病理学), 内藤 裕二(京都府立医大・消化器内科)
抄録 [目的]大腸SM癌は内視鏡治療の適応拡大が望まれるが,一方でESDで切除された標本の精度管理や安全性も課題の一つである.今回我々は当院にてESDで切除された大腸SM癌に対して同時期に外科手術で切除された症例と比較し臨床病理学的検討を行う.[方法]対象は,当院消化器内科において過去5年間に大腸ESDを施行した533例中SM癌60例(11.2%)を内視鏡切除群(E群)とし,同時期に外科手術を行ったSM癌120例を外科手術群(S群)として検討を行った.検討項目はSM浸潤距離,垂直断端, 脈管侵襲(ly, v),偶発症とした.[結果]平均SM浸潤距離はE群: 2439um,S群: 2861umであった(NS).またE群における垂直断端陽性率は17%(10/60)であった.脈管侵襲陽性率は,lyはE群: 27%,S群: 32% であり,vはE群: 21%,S群: 18%であった(NS).偶発症は,E群では5例, 8.3%(出血1例,穿孔3例,腹膜炎1例)に認められたがすべて保存的に軽快しえた.なおE群では再発・転移リスクについて67%(40/60)の症例がガイドライン上追加外科手術を考慮する病変であり,そのうち21例(35%, 21/60)に外科手術が施行され1例にリンパ節転移を認めた.また追加外科切除を考慮すべき症例で経過観察をしている17例については平均観察期間38か月で明らかな再発・転移は認めていない.[考察]大腸SM癌に対する適応拡大においてESDは脈管侵襲の頻度は手術例と変わらず十分な評価をしえる標本が得られていた.一方で深部断端陽性例が一部認められること,追加外科切除を考慮する病変の割合が多いことが課題として考えられた.
索引用語 大腸SM癌, ESD