抄録 |
【目的・方法】近年早期大腸癌の多くは内視鏡摘除で根治可能となったがSM癌には少ないながらリンパ節転移があるため外科切除が必要な症例がある.ガイドライン改訂以後SM浸潤度1000μm以深例に対して追加腸切除が考慮されるようになったが過大侵襲となる症例も存在する.今回1990年から2010年に経験した大腸SM癌645例の中で1)外科切除例のリンパ節転移陽性例,2)EMR後経過観察後再発例を検討し,SM癌の内視鏡治療適応拡大に関して考察してみた.【結果】1)リンパ節転移陽性例:リンパ節郭清術を施行した397例中リンパ節転移陽性例は39例(10%),そのうちSM浸潤度1000μm以深例は34例(87%),脈管侵襲陽性例は31例(79%)で,35例(90%)が追加腸切除の適応基準で有用性は示唆された.一方で,適応基準外のリンパ節転移陽性例が2例(5.1%)あった.また,このうち追加腸切除のリンパ節陽性例は127例中9例(7%),6例がSM浸潤度1000μm以深(67%),脈管侵襲陽性が7例(78%)であった. SM浸潤度のみの理由で切除されたものが2例あった.一方でSM1000μm未満でも脈管侵襲陽性を伴う3例(33%)でリンパ節転移陽性であった. 2)EMR後経過観察例: EMR後経過観察となった257例中局所再発は5例,腸管内再発2例, 腸管内再発及びリンパ節再発1例,リンパ節再発3例,肝・骨転移再発1例であった.リンパ節再発の3例中2例は外科切除で根治を得たが,1例は多発リンパ節再発を生じ,化療施行するも癌死した.この3例はいずれもSM浸潤度1000μm以深で,多発リンパ節再発例は脈管侵襲陽性であった.【考察】SM癌リンパ節転移陽性例は少ないながらもSM浸潤度1000μm以深のみの因子でも存在していたまた,また,当科では2005年以降564例の大腸癌に腹腔鏡手術を行い,このうち早期大腸癌では再手術例は1例もなく,術後QOLの向上に加えクリニカルパスの導入に伴い早期退院が可能である.SM癌のリンパ節転移は少ないながらも存在しており再発死亡例の存在も考慮すると確実な救命という観点から適応拡大には慎重にすべきと考えられた. |