セッション情報 ワークショップ5(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

大腸SM癌に対する内視鏡治療の適応拡大

タイトル 内W5-11:

初回内視鏡切除されたpSM癌の長期予後(多施設共同試験)

演者 依田 雄介(国立がん研究センター東病院・消化管内視鏡科)
共同演者 池松 弘朗(国立がん研究センター東病院・消化管内視鏡科), 斎藤 豊(国立がん研究センター中央病院・消化管内視鏡科)
抄録 【背景】大腸SM癌の内視鏡切除適応病変は,リンパ節転移が低リスクとされる高・中分化腺癌,深達度1000μm未満,脈管侵襲陰性,Budding Grade1の4条件を満たす症例とされている.今後適応拡大が議論される上で,リンパ節転移リスクの解明と同時に,内視鏡的切除された症例の長期予後の検証が必要とされるが報告が少ない.【目的】初回治療で内視鏡的切除された大腸pSM癌の長期成績を明らかにすること【対象】2000年1 月~2007年12月に6施設で内視鏡的切除された,以下の1~4を満たす大腸 pSM 癌.1.過去五年間に活動性の他の悪性腫瘍を有していない 2.過去5年間に進行大腸癌の既往がない 3.FAPなどの背景疾患がない 4.追跡期間一年以上【方法】内視鏡的切除のみで経過観察されたlow-risk pSM癌(ER-LR群),high-risk pSM癌(ER-HR群),追加手術されたhigh-risk pSM癌(SR-HR群)の3群に分け,retrospectiveに長期成績を検討した.評価項目は,再発率,5年無病生存期間(DFS),5年生存期間(OS)とした.【成績】対象症例は422例であった(平均観察期間60.5ヶ月).ER-LR群120例の長期成績は,直腸の1例(0.8%: 95%信頼区間0-4.6%)で遠隔再発を認めた.DFSは98%,OSは94%であった.ER-HR群106例の再発率 は,7例(6.6%: 95%信頼区間2.7-13.1%)に認め,そのうち6例が局所再発(骨盤内再発)で,5例が直腸病変であった.DFS は89%,OSは98%であった.結腸・直腸別でみると,DFSにて有意に直腸pSM癌(78%)は結腸pSM癌(97%)に比較して低かった(P<0.01).SR-HR群196例の再発率は,7例(3.6%: 95%信頼区間1.5-7.2%)に認め,6例が遠隔転移であった.DFSは97%,OSは99%であった.【結論】内視鏡切除のみで経過されたhigh-risk pSM癌は直腸で局所再発を多く認めた.長期予後の観点から,直腸pSM癌は慎重に治療方針を決定される必要があることが示唆された.
索引用語 大腸SM癌, 長期予後