抄録 |
【背景】大腸癌治療ガイドラインにおける大腸SM癌の内視鏡的摘除後治療方針はリンパ節転移危険因子の検討結果を中心に作成されているが治療後発生した死亡をエンドポイントとした生命予後規定因子の考慮が必要である.また,病理組織学的所見より追加腸切除を考慮する症例であっても高齢を理由に内視鏡治療後経過観察とする方針が容認可能か,大腸癌治療ガイドライン適応以前の内視鏡治療症例を用いた生命予後の検討が必要である.【目的】大腸SM癌に対する生命予後規定因子を検討すること.また,生命予後での観点による大腸SM癌の内視鏡治療方針を明らかにすること.【対象】大腸癌治療ガイドライン適応以前の 1984-1999年度に関連施設でがん登録された大腸SM癌症例のうち治療後追跡可能で,且つ,病理組織学的再検討可能であった188例.【方 法】対象の臨床背景(性別,年齢,治療法),病理組織学的所見(SM浸潤距離,組織型,脈管侵襲の有無,簇出の有無),累積死亡(全死亡,大腸癌死亡)を再検討した.【成績】対象の治療法別内訳はA群(外科手術)142例,B群(局所切除後経過観察)46例であった.全累積死亡は32例で治療法別内訳はA群23例,B群9例であった.大腸癌累積死亡は8例で治療法別内訳はA群5例,B群3例であった.A群に多変量解析施行したところD2-40免疫染色を用い診断したリンパ管侵襲陽性が大腸癌死亡における生命予後規定因子と検出された(ハザード比13.769,95%信頼区間 1.984-95.558).次にB群の病理組織学的所見を再検討すると追加腸切除適応23例が含まれ大腸癌死亡は全例追加腸切除適応症例に含まれた.B群の高齢者(65才以上)30例を検討すると他病死6例,大腸癌死2例と他病死が多かった.【結論】生命予後の観点による大腸SM癌内視鏡治療方針は内視鏡切除標本の病理組織学的所見から追加腸切除を考慮する所見があれば外科手術追加が望ましいが,高齢を理由に内視鏡治療後経過観察施行する方針も容認可能である.また,D2-40でのリンパ管侵襲陽性大腸SM癌は根治術後厳密な経過観察が必要である. |