セッション情報 ワークショップ8(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

消化器疾患と胆汁酸

タイトル 肝W8-5:

NAFLD患者血清における酸化ステロール上昇とその意義

演者 池上 正(東京医大茨城医療センター・消化器内科)
共同演者 本多 彰(東京医大茨城医療センター・消化器内科DELIMITER東京医大茨城医療センター・共同研究センター), 松崎 靖司(東京医大茨城医療センター・消化器内科)
抄録 酸化ステロール(Oxy)はコレステロール(Chol)が非酵素的に、あるいは酵素的に酸化されることで産生され、胆汁酸の前駆物質となる。NAFLD患者に対するピタバスタチン投与の効果を検討した多施設試験により得た患者血清ならびに健常者血清を用いて、NAFLD患者のChol代謝とOxyの関連について検討した。【方法】肝生検にて診断した、高Chol血症を伴うNAFLD患者の血清 (n=15)、ならびに性・年齢をマッチさせた肥満、耐糖能異常、脂質異常症のない健常者血清(n=36)を用いて、LC-MS/MSにて各種脂質代謝マーカーを測定した。【結果】Chol合成マーカー(Lathosterol/Chol比)は両群で有意差なく、腸管でのChol吸収マーカー(SitosterolあるいはCampesterol/Chol比)はNAFLD群で有意に低下していた。胆汁酸合成マーカー(C4/Chol比)、胆汁酸分泌マーカー(FGF19)、脂肪酸de novo合成マーカー(マロン酸)、脂肪酸β酸化マーカー(Acetylcarnitine)は両群で有意差は見られなかった。Oxyとして、24S-hydroxychol, 27-hydroxychol、25-hydroxychol、4β-hydroxycholを測定した。Oxy/Chol比では、24S-hydroxychol以外はすべてNAFLD患者で有意に上昇していた。HOMA-IRと3つのOxy/Chol比の和の間には有意な相関がみられた。ピタバスタチン投与により、Cholの低下に伴って3ヶ月目からChol合成マーカーの低下がみられ、また吸収マーカーは12ヶ月投与にて有意に増加した。一方Oxyは絶対値では12ヶ月目で低下傾向にあったが、Cholとの比では投与期間中有意な変化が見られなかった。【考察および結語】LXRのリガンドであるOxyの増加はABCG5/8の発現増加を促進し、胆汁内へのCholの排泄を促すとともに腸管からの吸収を抑制していると考えられる。また、NAFLD患者では、胆汁酸合成ならびに分泌はCholが増加しているにもかかわらず亢進しておらず、Chol負荷に対する適応性の低さが示された。インスリン抵抗性と血中Oxyの間には相関があり、病態への関与が示唆された。
索引用語 胆汁酸, 酸化ステロール