セッション情報 ワークショップ6(消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

胆道疾患の診断・治療に有用な画像診断-内視鏡診断から三次元画像診断

タイトル 消W6-8追:

超拡大内視鏡を用いた新たな胆道診断,癌進展範囲の同定手法

演者 吉川 徹(弘前大・消化器外科DELIMITER青森市民病院・外科)
共同演者 袴田 健一(弘前大・消化器外科), 小笠原 紘志(弘前大・消化器外科)
抄録 胆管癌に対しては完全切除が唯一長期生存を得る手段であるが,胆道造影等による画像診断の他,擦過細胞診・胆汁細胞診では質的診断が困難であることが少なくない.近年,接触式光学顕微鏡であるEndocytoscopy(ECS)が開発され,いくつかの腫瘍で細胞レベルの精度の高い診断の可能性が指摘されているが,胆管癌診断における有用性は明らかではない.胆道・膵手術による胆道切除術標本に対し,ECSを用いた胆管癌水平方向進展診断能を検討した.対象:2010年9月28日より2011年8月31日まで当大学消化器外科にて胆道切除術を施行された切除標本のうち,ECSにて観察を施行しえた42例.観察方法,記録方法が安定し,検討可能なものは36例.使用機材, Spec:ECS(XEC-300-U),光学拡大式,有効倍率570倍(19inchモニタ上) ,視野300x300um, 水平解像度4.2um方法:胆道切除術標本摘出直後,癌取扱規約に則り胆管を解放し,肉眼写真を撮影.病変部,病変周囲部,切離断端を中心に観察部位を決定した.重曹加dimethicone溶解水噴霧後,生理食塩水にて緩やかに洗浄.未染色,1%methylenblue噴霧後に観察・記録し,走査部位を病理学的に診断した.結果:未染色状態では赤血球集簇より類推される毛細血管の多寡,幅,蛇行が観察され,染色後,核異型,構造異型の観察が可能であった.ECS観察部は病理組織学的に診断し,ECS所見と病理組織学的所見の整合性を図り,これらを基にECSによる胆管癌診断基準であるECS Scoreを作成した.ECS Scoreは正常粘膜0-3,炎症胆管0-6,上皮内癌1-10,浸潤癌3-11点に分布し,癌部と非癌部に有意差を認めた(p<0.001).Cut off値5点に設定した際の上皮内癌を含む癌局在の正診率は92.1%,感度91.1%,特異度93,5%と高い診断能を示した.超拡大内視鏡による新たな胆道診断法,ことにECS Scoreを用いた胆管癌診断は良悪性判断,また病変範囲の同定の新たな手法として期待される.
索引用語 endocytoscopy, 胆管癌