セッション情報 |
ワークショップ7(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)
肝胆膵疾患と糖・脂質代謝異常
|
タイトル |
肝W7-3:慢性C型肝炎患者に見られる血清コレステロール値低下のメカニズム
|
演者 |
池上 正(東京医大茨城医療センター・消化器内科) |
共同演者 |
本多 彰(東京医大茨城医療センター・消化器内科DELIMITER東京医大茨城医療センター・共同研究センター), 松崎 靖司(東京医大茨城医療センター・消化器内科) |
抄録 |
コレステロール(Chol)はHCVの増殖に重要であり,in vitroや動物実験でHMGCoA還元酵素(R)の発現増加が報告されている.一方,多くの疫学的研究で慢性C型肝炎(CHC) 患者は健常人に比して血中Cholの低下傾向があることが示されてきた.これらの乖離を説明するため以下の検討を行った.【方法】CHC患者血清(n=55),ならびに性・年齢をマッチさせた健常者(CTL)血清(n=113)を用いて,LC-MS/MSにて各種脂質代謝マーカーを測定した.【結果】(1) 血清CholはCTL群:191.2mg/dlに対しCHC群:120.4mg/dlと有意に低下していた.(2) Chol合成経路の中間代謝物では,HMG-CoARの直接代謝産物であるメバロン酸はCTL群とCHC群で有意差がなく,またSqualene以後の代謝物であるLathosterol/Chol比やDesmosterol/Chol比にも有意差がみられなかった.一方,Cholの直前段階の代謝物である7-dehydroChol(7DHC)/Chol比はCHC群で有意に増加していた.(3) 胆汁酸合成(C4/Chol比),酸化ステロール(27-hydroxyChol, 25-hydroxyChol, 4β-hydroxyChol/Chol比)はCHCで有意に増加していた.(4) 肝生検結果をもとに行ったサブ解析では,線維化の進行とこれらのChol代謝マーカーの変動には相関がみられなかった.(5) PEG-IFN/RBVを投与開始後3ヶ月目の血清データでは,当初見られたマーカーの変化はすべて健常者に近似した値に戻っていた.【考察および結語】近年のヒトサンプルを用いた検討では,CHC患者でのコレステロール合成が低下していることを支持するものが増加している.今回の検討により,7DHCをCholに還元する7dehydroChol reductase (7DHCR)がHCVのターゲットとなりChol合成が低下している可能性が示された.また,不安定な7DHCから未知の経路を通して酸化ステロールや胆汁酸の産生が増加している可能性が指摘された.これらの変化は肝障害の進行と相関せず,またIFNの投与によってキャンセルされることから,HCV感染そのものがもたらす変化であると考えられた. |
索引用語 |
HCV, コレステロール代謝 |