抄録 |
【目的】C型肝炎ウイルスの持続感染によってインスリン抵抗性,肝脂肪化や脂質代謝異常をしばしば惹起する.一方,亜鉛 (Zn),銅 (Cu) およびセレン (Se) 等の微量元素は,血糖や脂質の恒常性に重要な役割を果たしている.また,非アルコール性脂肪性肝疾患患者における肝組織中の Cu値と肝脂肪化の程度が逆相関するとの報告もみられる.今回,C型慢性肝疾患(CLD-C) 患者における糖・脂質代謝異常とこれらの微量元素との関連について検討した.【方法】対象はCLD-C患者54例である.対象患者におけるインスリン抵抗性はHOMA-IR値を算出して,肝脂肪化はBruntらの分類を用いてそれぞれ評価した.【成績】対象患者におけるHOMA-IR値と血清Zn値 (r=-0.318, p=0.0216) およびHOMA-IR値と血清Se値 (r=-0.295, p=0.0438) との間には有意な逆相関を認めたが,HOMA-IR値と血清Cu値との間には全く相関がみられなかった (r=0.006, p=0.9671).肝脂肪化については,grade 2における血清Zn値がgrade 0のそれと比較して有意に低値を示した (62.4±7.6 vs 73.3±12.6 μg/dl, p=0.0480) が,肝脂肪化の程度と血清CuまたはSe値との間に有意な相関は認められなかった.また,血清Zn, Cu, Se値と総コレステロール値,および血清Zn, Cu, Se値と中性脂肪値との関連についても解析したが相関はみられなかった.なお,対象患者におけるこれらの微量元素同士の関連については,血清Zn値とSe値との間に有意な正の相関を認めた (r=0.311, p=0.0335) が,血清Zn値とCu値,血清Se値とCu値との間には有意な相関は認められなかった.【結論】CLD-C患者においてZn欠乏はインスリン抵抗性と肝脂肪化に,Se欠乏はインスリン抵抗性にそれぞれ関与するが,CLD-C患者における血清Cu値はインスリン抵抗性にも肝脂肪化にも影響を与えないことが示唆された. |