セッション情報 ワークショップ7(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝胆膵疾患と糖・脂質代謝異常

タイトル 肝W7-5:

肝硬変患者における脂肪酸吸収障害の機序とBCAA製剤による小腸脂肪酸吸収能の改善効果

演者 山本 安則(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学)
共同演者 池田 宜央(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学), 日浅 陽一(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学)
抄録 【目的】肝硬変患者における吸収不良・栄養障害の一つに食事由来脂質の吸収障害があるがその病態は十分解明されていない.演者らは,肝硬変患者で小腸粘膜に形態変化が生じ,栄養吸収に影響しうることを報告してきた.また,BCAA製剤は小腸粘膜再生促進,粘膜保護作用など消化管機能への関与の報告がみられている.そこで今回,肝硬変患者の小腸脂肪酸吸収能と脂肪酸吸収関連分子を解析し,脂肪酸吸収障害の機序の解明とBCAA製剤の小腸脂肪酸吸収能への効果を検討することを目的とした.
【方法】対象は健常者23名およびBCAA製剤を投与していない肝硬変患者42名(門脈圧亢進症なし:PH(-)LC 24名,門脈圧亢進症あり:PH(+)LC 19名).脂肪酸吸収について長鎖脂肪酸13C sodium palmitateを上部消化管内視鏡を用いて十二指腸水平脚に直接投与し,投与後6時間まで13CO2呼気排出量(AUC)を測定し解析した.また同意を得た被験者の上部空腸より生検し,脂肪酸吸収関連細胞内分子の発現を評価した.さらにPH(+)LC患者においては,BCAA製剤投与群24名を追加し非投与群との脂肪酸吸収能の比較検討を行った.
【成績】13CO2呼気累積排出量(AUC)は,特に投与後期120-360分において肝硬変患者で有意に低下しており,PH(+)LC群では他群より顕著であった(p<0.01).また,空腸生検組織において,PH(+)LC群は健常者群と比較し小胞体に存在するchylomicron合成関連分子であるFATP4 (Fatty Acid Transport Protein 4)とMTTP (Microsomal triglyceride transfer protein)の発現が有意に低下していた(p=0.007,p=0.039).さらに PH(+)LC群で見られたAUCの低下は,BCAA投与群では,非投与群に比較し有意な改善が見られた.
【結論】門脈圧亢進症を伴う肝硬変患者では,食事由来脂肪酸の著明な吸収異常と小腸小胞体でのchylomicron合成関連分子の発現低下が見られた.また,BCAA製剤はその吸収障害の病態を改善する可能性が示唆された.
索引用語 BCAA, 脂肪酸吸収