セッション情報 ワークショップ7(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝胆膵疾患と糖・脂質代謝異常

タイトル 肝W7-7:

肝での糖・脂質代謝異常に伴うPPARγ活性低下を介した炎症・発癌・癌増殖の促進機序の解明

演者 久保木 知(千葉大・臓器制御外科)
共同演者 清水 宏明(千葉大・臓器制御外科), 宮崎 勝(千葉大・臓器制御外科)
抄録 【目的】PPARγは糖・脂質代謝を調節する転写因子で,その活性低下は耐糖能・脂質代謝異常を惹起するが,近年PPARγ活性亢進の抗炎症,抗腫瘍効果が報告される.今回,糖・脂質代謝異常に伴うPPARγ活性低下の肝での炎症・発癌・癌増殖への影響を検討.【方法】若年マウスと老年マウスを用いてI/R障害肝でのPPARγ活性と炎症の関連を解明.硬変肝やHCCでのPPARγ活性の発癌や癌増殖への影響をin vitroおよびin vivoで評価.【成績】若年マウスと比べ老年マウスでは脂肪肝増強に伴って肝のPPARγ活性は低下した.若年マウスではI/R障害によるPPARγ活性抑制は軽度で,PPARγリガンド投与で活性は維持され,autophagy作用の増強を介して炎症性障害は軽減した.老年マウスではI/R障害にてPPARγ活性は著明に抑制,リガンド投与による活性亢進やautophagy作用増強は認めなかった.我々は以前,高侵襲手術後はadiponectin発現減少,adipokine発現増加により炎症性cascadeが亢進する事,肥満患者では術後のadiponectin発現がより低下して炎症性cascadeがより亢進する事を報告した.よって,肥満等の糖・脂質代謝障害に伴い肝のPPARγ活性は低下し,炎症性cascadeが亢進して炎症性障害は増強する事が示された.次にPPARγ活性のHCC発癌や癌増殖への影響を検討.正常肝と比べ硬変肝ではPPARγ活性は低下.また,PPARγ+/-マウスでは肝のPPARγ活性が低下し,肝癌の発生リスクが亢進.NASHは発癌母地である事などより,脂質代謝障害に伴う肝のPPARγ活性低下はHCC発癌を惹起すると考えられた.そしてPPARγ強発現HCCではPPARγ活性亢進によるCks1-Skp2発現低下を介したp27発現増強に伴うcell cycle arrestにより腫瘍増殖は抑制された.HCC内PPARγ活性亢進はNF-κB活性と負の相関を認め,IL-8産生抑制を介する抗炎症作用もPPARγの抗腫瘍効果に関与した.【結語】糖・脂質代謝異常に伴う酸化ストレスがPPARγ活性抑制を介して炎症を惹起し,発癌を誘導し,腫瘍増殖を促進する可能性が証明された.
索引用語 PPAR-gamma, 肝細胞癌