セッション情報 ワークショップ7(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝胆膵疾患と糖・脂質代謝異常

タイトル 肝W7-8:

肝細胞癌と糖・脂質代謝異常―外科切除例の検討―

演者 原 康之(東北大病院・移植・再建・内視鏡外科)
共同演者 宮城 重人(東北大病院・移植・再建・内視鏡外科), 川岸 直樹(東北大病院・移植・再建・内視鏡外科)
抄録 【背景】生活習慣病やNAFLD/NASH等と関連の強い非B非C型(NBNC)肝細胞癌が増加傾向にある.今回我々は肝細胞癌に対する初回肝切除症例について糖・脂質代謝異常の観点から臨床像・病理組織像・治療予後について検討した.【対象】1999年2月~2012年11月の間に肝細胞癌に対し当科で施行した初回肝切除206例.【結果】NBNCHCC(NBNC群)51例,肝炎ウィルスが関与するもの(BC群)155例.BC群の内訳は,HBs抗原のみ陽性56例,HCV抗体のみ陽性95例,HBs抗原陽性HCV抗体陽性4例.手術時平均年齢は,NBNC群71歳・BC群63歳でNBNC群の方が有意に高齢で,かつ男性の割合が高かった.術前の肥満(BMI≧25)・糖尿病は,NBNC群36.5%・53.9%,BC群24.2%・30.5%とどちらもNBNC群が有意に高率であった.脂質異常症に関しては両群で差はなく,メタボリックシンドロームはNBNC群で高い傾向にあった.アルコール多飲歴はNBNC群26.9%・BC群12.7%でありNBNC群で高率であった.術前の空腹時血糖・総コレステロール値・トリグリセリド値に両群間で差はなかった.各群の病理学的病期は,NBNC群7.8/45.1/33.3/9.8/3.9%,BC群10.6/37.8/38.4/10.6/2.7%で差はなかった.病理組織学的検討では,NBNC群は最大腫瘍径が有意に大きく,腫瘍個数が少なかった.脈管浸潤及び分化度に関して両群で差はなかった.最近3年間の全症例のうち背景肝がNASH/NAFLDであったものは2/69例(2.9%)でありどれもNBNC群であった.全症例の,3年・5年生存率は77.4%・65.7%,3年・5年無再発生存率 (DFS) は42.1%・29.4%.群別の3年・5年生存率はNBNC群86.0%・75.1%,BC群75.0%・62.9%でありNBNC群が良好だった.DFSは両群間で差はなかった.【結語】ウィルスの関与しないNBNCHCCにおいて高齢・肥満・糖尿病の関与が強く示唆された.一方,脂質異常症との関連はみられなかった.又,診断時に腫瘍径が大きく病状が進行しているが予後は良好であった.High risk群を中心に早期診断を行うことで更なる予後向上が望めると考えられた.
索引用語 肝細胞癌, 糖・脂質代謝異常