セッション情報 ワークショップ7(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝胆膵疾患と糖・脂質代謝異常

タイトル 消W7-9:

肝胆道系におけるNiemann-Pick C1 like 1 protain (NPC1L1)の存在と機能~選択的阻害薬Ezetimibeを用いた臨床研究と基礎的検討~

演者 岸川 暢介(広島大大学院・病態薬物治療学)
共同演者 菅野 啓司(広島大大学院・病態薬物治療学), 田妻 進(広島大大学院・病態薬物治療学)
抄録 【目的】腸管コレステロール吸収を担うNPC1L1の選択的阻害薬であるEzetimibeが脂質異常症治療薬として用いられるようになり,当講座はEzetimibeが胆汁脂質に与える影響に着目し,臨床的に検討してきた.一方でNPC1L1はコレステロールだけでなく,食事由来の酸化ステロールの吸収にも関わっているとの報告もあり,肝胆道系疾患と酸化ステロールの関連も注目されている.そこで肝胆道系の細胞を用いてNPC1L1による酸化ステロール吸収を評価する目的で基礎研究を行った.【方法】臨床的検討:脂質異常症患者11例を対象にEzetimibe(10mg/day)を1年間投与して血清脂質,コレステロール合成/吸収マーカーを解析するとともに,デヒドロコール酸投与による分泌刺激にて内視鏡的に回収した十二指腸胆汁の脂質分析を行なった.基礎的検討:ヒト肝細胞株(HepG2),ヒト胆嚢上皮細胞株(OCUG1)にLXRのリガンドである酸化ステロール22(R)-hydroxycholesterol(22R)を投与し,Ezetimibeの共投与でLXRのターゲット遺伝子の発現に変化があるかqPCR法を用いて評価した.【成績】臨床的検討:1年間Ezetimibeを投薬すると,血清のT-chol,LDL-Cは減少傾向を示し,コレステロール吸収指標も優位に低下したが,合成指標は増加する傾向にあった.胆汁脂質ではUDCAを内服していない2例では有意な催石指数の改善を認めた.基礎的検討:HepG2とOCUG1にNPC1L1の発現を認めた.Ezetimibe共投与下で22Rを与えたところ,非投与時と比べ,LXRのターゲット遺伝子の発現が低下する傾向にあった.【結論】EzetimibeはNPC1L1を阻害することで,血液中だけでなく胆汁中のコレステロール濃度も低下させた.一方,NPC1L1は肝細胞癌株だけでなく胆嚢癌細胞株でも発現しており,コレステロールの肝臓胆嚢間の微小循環の可能性を想起させた.また,NPC1L1は酸化ステロールの吸収にも関与している可能性があり,Ezetimibeが肝胆道系疾患における新たな治療戦略となることが期待される.
索引用語 NPC1L1, 胆汁脂質代謝