セッション情報 ワークショップ7(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝胆膵疾患と糖・脂質代謝異常

タイトル 消W7-10:

糖・脂質代謝異常は総胆管結石の危険因子か?

演者 柘野 浩史(津山中央病院・消化器・内視鏡センター)
共同演者 竹本 浩二(津山中央病院・消化器・内視鏡センター), 藤木 茂篤(津山中央病院・消化器・内視鏡センター)
抄録 【目的】糖質・脂質代謝異常症は胆石症に高率に合併し,胆嚢結石の形成過程への関与が明らかになっている.一方で,総胆管結石は形成過程がやや異なり,胆嚢結石の落下以外には胆道感染に起因するものが殆どとされているが,糖質・脂質代謝異常の関与については未だに不明な点が多い.今回我々は,総胆管結石への糖質・脂質代謝異常の関与を検討し,代謝異常の調節による治療的意義についても検討した.【方法】当院で過去8年間に治療的内視鏡処置を実施した総胆管結石症例1307件のうち,糖質・脂質代謝異常の有無が判明している658件について検討を行った.このうち,EST後に結石除去を行った499件については,代謝異常の状態が再発に及ぼす影響を検討した.【成績】糖質代謝異常を18.5%(122件),脂質代謝異常を14.3%(94件)に認めた.結石除去を実施した症例では,落下結石と思われる黒色石は15.0%(75件),コレステロール結石(コ石)は1.6%(8件)で,その他はビリルビンカルシウム結石(ビ石)と思われる結石が主体であった.同時期に胆石手術を実施した症例(196件)による検討では,コ石の8件で胆嚢内にもコ石を認めた.Kaplan-Meier法により,再発期間を糖質代謝異常・脂質代謝異常の有無で各々を2群に分けて,Logrank検定で比較検討した.再発期間は各々で有意差は認めなかった.また,治療不十分によるコントロール不良群と正常群との比較検討も行ったが,これも各々で再発期間の有意差は認めなかった.Cox比例ハザード回帰分析を用いて,再発期間に関与する因子を検討した.憩室の存在(p<0.01)と胆管径(p<0.01)に相関を認めたが,糖質および脂質代謝異常は各々有意な因子ではなかった.【結論】1)糖質および脂質代謝異常は総胆管結石への有意な影響は指摘されなかった.2)総胆管結石にはコ石が少ないため,脂質代謝異常はあまり影響しないと考えられた.3)ビ石の形成に関与する胆道感染には,糖質代謝異常よりも,解剖学的因子の影響が大きい可能性が示唆された.
索引用語 総胆管結石, 糖・脂質代謝異常