セッション情報 ワークショップ7(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝胆膵疾患と糖・脂質代謝異常

タイトル 消W7-12:

自己免疫性膵炎における糖代謝異常

演者 来間 佐和子(がん・感染症センター都立駒込病院・内科)
共同演者 神澤 輝実(がん・感染症センター都立駒込病院・内科), 関谷 綾子(がん・感染症センター都立駒込病院・内科)
抄録 【目的】自己免疫性膵炎は,膵腫大を呈し高齢男性に好発する疾患で,ステロイドが奏効する.IgG4関連疾患の膵病変と考えられ,合併する種々の膵外病変もステロイド治療により軽快する.膵実質の破壊により膵内外分泌機能が低下し,耐糖能異常を呈することが多い.自己免疫性膵炎患者の糖代謝異常の臨床像やステロイド治療後の経過を検討した.【方法】自己免疫性膵炎88例において,糖尿病合併群(合併群)と非合併群に分け,年齢,性別,膵腫大の程度,IgG4値などを検討した.合併群のなかでステロイド開始3月後,1年後,3年後のHbA1c値を測定した例において,治療前より0.5%以上低下している場合を改善,0.5%以上上昇している場合を増悪,それ以外を不変とし糖尿病の経過を検討した.治療開始前後でPFDを行った11例について,治療前より10%上昇した場合を改善,10%以上低下した場合を増悪,それ以外を不変とし比較検討した.【成績】自己免疫性膵炎の36例(41%)に糖尿病を合併した.糖尿病の発症時期は,膵炎の発症前17例,同時発生17例,不明2例であった.膵炎発症時の年齢は,合併群で有意に高く(69.0歳 vs. 63.5歳,p<0.001),性別や膵腫大の程度に差を認めなかった.合併群中,ステロイド開始3か月後のHbA1cを測定した14例中改善6例(42%),不変2例,増悪6例で,1年後では18例中改善9例(50%),不変7例,増悪2例で,3年後では10例中改善5例(50%),不変4例,増悪1例であった.3か月後に増悪していた6例中4例は自己免疫性膵炎の発症前に糖尿病を発症し,1年後に2例が改善し,4例が不変となった.PFDは治療開始前に10例で低下しており,治療後は改善7例(67%),不変2例,増悪2例であった.このうちPFDも糖尿病も改善2例,PFDのみ改善3例,どちらも増悪1例であった.【結論】自己免疫性膵炎の41%に糖尿病を合併し,糖尿病合併例は有意に高齢であった.耐糖能はステロイド治療後約半数の例で改善し,短期経過で糖尿病が増悪した例でも長期的には改善する例がみられた.
索引用語 自己免疫性膵炎, 糖尿病