セッション情報 ワークショップ7(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝胆膵疾患と糖・脂質代謝異常

タイトル 吸W7-14:

進行膵癌の集学的治療における膵性糖尿病および消化吸収障害の治療の重要性

演者 河邉 顕(国立九州医療センター・消化器内科DELIMITER国立九州医療センター・臨床研究センター)
共同演者 藤森 尚(国立九州医療センター・消化器内科DELIMITER国立九州医療センター・臨床研究センター), 伊藤 鉄英(九州大・病態制御内科)
抄録 【目的】膵癌は膵内外分泌障害(膵性糖尿病,消化吸収障害)を合併していることが多い.今回我々は,膵癌の集学的治療において,膵性糖尿病と消化吸収障害の治療が,その生存期間に与える効果について検討した.【方法】2009-2011年に当科で治療した切除不能進行膵癌47例において,糖尿病の有無,糖尿病治療法別,膵酵素消化剤投与の有無に分け,各群間における全生存期間(OS)を比較した.【結果】全47症例は,平均年齢69.1歳,男女比は21:26,StageはIVa症例11例,IVb症例36例であった.全47症例のOSは中央値(MST)6.5ヶ月であった.Stage別ではIVa群18ヶ月,IVb群6.4ヶ月で,IVa群において有意にMSTの延長を認めた(p=0.0023).膵内分泌障害について解析した.全47症例中,糖尿病(DM)症例は16例,非DM症例は31例であった.両群間でのOSの比較では,中央値では差を認めなかったが,平均値ではDM群6.6ヶ月,非DM群9.6ヶ月と非DM群でOSが長い傾向にあった.次にDM治療法別に比較した.DM群16症例中,経口血糖降下薬は5例,インスリンは9例,食事療法は2例であった.経口薬群とインスリン群の比較では,OSは経口薬群3.7ヶ月,インスリン群7.5ヶ月と,インスリン群で予後良好な傾向にあった.次に膵外分泌障害について解析した.全47症例中,消化酵素剤投与群が25例,非投与群22例であった.両群間のOSの比較では,投与群6.5ヶ月,非投与群6.6ヶ月と差を認めなかった.一方,消化酵素剤投与群において3ヶ月以上の予後を認めた16例において,消化酵素剤投与後に血清アルブミン値が維持または上昇した群と低下した群で比較すると,維持・上昇群17.8ヶ月,非投与群5.6ヶ月と,維持・上昇群において有意に予後の延長を認めた(p=0.0011).【結論】切除不能進行膵癌の集学的治療において,膵内外分泌障害への積極的な治療導入が,予後改善に寄与する可能性が示唆された.
索引用語 膵臓癌, 膵機能障害