セッション情報 ワークショップ8(肝臓学会・消化器病学会合同)

ASH/NASH肝癌の臨床像とフォローアップ体制の確立

タイトル 肝W8-2:

発癌例におけるアルコール摂取量と生命予後

演者 細川 貴範(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】アルコール性肝障害やNASHといった生活習慣を背景とした肝発癌は増加している.これらの予後改善のための有効な対策は明らかではない.これらの肝癌症例の予後と背景とを比較することで,予後改善のための対策を検討した.【方法】当院で初回治療を行った肝癌症例のうちアルコール性,NASH,明らかな原因のない肝癌症例285例を対象にretrospectiveに解析をおこなった.【成績】285例のうちアルコール性は130例,NASHは52例,cryptogenicは103例であった.平均年齢70.4歳,平均腫瘍径は35.6mm,腫瘍数は1個150例,2個37例,3個14例,多発82例,5年生存率49.5%であった.予後に寄与する因子としてアルブミン2.8g/dl未満(p<0.0001),γGTP100U/L以上(p=0.027),AFP50ng/mL以上(p<0.0001),腫瘍数2個以上(p<0.0001)が予後不良因子であった.アルコール,NASH,cryptogenicで予後に差はなく,エタノール摂取量でも差は認めなかった.腫瘍径3cm以下3個以下に限って解析を行うとアルブミン2.8g/dl未満(p=0.014),血小板数12万未満(p=0.0071),喫煙 (p=0.022)が予後不良因子であった.また初回治療時のエタノール摂取量が20g/day以上で予後不良な傾向を認めた(p=0.094).アルコール性に限って解析を行うとアルブミン2.8g/dl未満(p=0.0046),血小板数12万未満(p=0.0013),喫煙 (p=0.041)で予後不良因子であり,糖尿病の既往で予後不良な傾向を認めた(p=0.054)【結論】生活習慣を背景とした肝発癌の予後は発見時の腫瘍因子と肝予備能に影響されるが,腫瘍が比較的早期で発見された場合,エタノール摂取量や喫煙等の生活習慣も予後に寄与した.このことから腫瘍発見時に適切な治療を行うとともに禁酒や禁煙の指導および糖尿病治療により予後が改善する可能性が示唆された.
索引用語 肝癌, NASH