セッション情報 ワークショップ8(肝臓学会・消化器病学会合同)

ASH/NASH肝癌の臨床像とフォローアップ体制の確立

タイトル 肝W8-3:

アルコール性肝障害から発症する肝細胞癌の臨床的特徴

演者 黒松 亮子(久留米大・消化器内科)
共同演者 住江 修治(久留米大・消化器内科), 佐田 通夫(久留米大・消化器内科)
抄録 【目的】非B非C肝癌の中で最も多いアルコールに起因する肝癌(アルコール性肝癌)の臨床的特徴についてウイルス性肝癌と比較検討した.【方法】1991/1から2010/12にアルコール性肝癌と診断された90例(HCV抗体陰性,HBs抗原陰性)を対象とし,発症時の背景因子,肝予備能,肝癌進行度,再発,予後を,同時期に診断されたウイルス性肝癌(B型190例,C型1339例)と比較検討した.【成績】肝癌2297例のうち,非B非C肝癌は221例(9.6%),アルコール性肝癌は90例(3.9%)で,前期に比べ後期で有意に増加していた(P=0.009).アルコール性肝癌の平均年齢は66歳,男女比89/1例,Child-Pugh A/B/C; 64/20/6例で,44例に糖尿病を合併していた.アルコール性肝癌は,C型肝癌とほぼ同等の発症年齢で,C型,B型肝癌に比し男性が圧倒的に多く(P<0.0001),肝予備能に有意差はなく,糖尿病合併率が有意に高く(P<0.0001),AFP低値,DCP高値の特徴があった.アルコール性肝癌のうち,Milan基準内で診断されたのは42例で,C型肝癌に比し有意に少なかった(P=0.0002).アルコール性肝癌の3/5年生存率は,46/39%で,C型肝癌に比し有意に低く(P=0.006),B型肝癌とほぼ同等であった.Milan基準内の患者の3/5年生存率は,74/66%と,B型肝癌,C型肝癌と同等であった.アルコール性肝癌根治例の再発率は,B型肝癌と同等で,C型肝癌より低い傾向にあった(P=0.058).多変量解析を用いたアルコール性肝癌の予後因子は,腫瘍径20mm以下(P=0.0005),脈管侵襲なし(P=0.014),AFP100ng/ml以下(P=0.015),Child-Pugh A(P=0.0003)であった.【結論】アルコール性肝癌の予後は,B型肝癌と同等でC型肝癌に比し悪かった.アルコール性肝癌が増加傾向にあること,進行癌で診断される症例が多いこと,Milan基準内で診断されればC型肝癌と同等の予後が得られること,二次発癌率が低いことより,早期診断に対する取り組みが重要と考えられた.
索引用語 肝癌, アルコール