セッション情報 ワークショップ8(肝臓学会・消化器病学会合同)

ASH/NASH肝癌の臨床像とフォローアップ体制の確立

タイトル 肝W8-6:

NASHおよびアルコール多飲者における肝発癌症例の背景因子に関する検討

演者 菅 宏美(広島大・消化器・代謝内科)
共同演者 兵庫 秀幸(広島大・消化器・代謝内科), 茶山 一彰(広島大・消化器・代謝内科)
抄録 【目的】NASHおよびアルコール多飲者における肝発癌症例の背景因子について臨床病理学的検討を行った.【対象】1992年1月から2011年12月までに初回診断を行った肝癌1832 例のうち,1)初発,HBsAg陰性かつHCVAb陰性の肝癌(NBNC肝癌)において,臨床的背景因子を検討した.2)NBNC肝癌肝切除例90例のうち,NASHおよびアルコール多飲歴(常酒家または大酒家)を有する症例の臨床病理学的検討を行った.【結果】1)初発癌1441症例のうち,NBNC肝癌243例(17%),B型肝癌255例(18%),C型肝癌927例(64%),B+C型肝癌16例(1%).1992年以降,4年次ごとのNBNC肝癌の割合は,9%(n=15),11%(n=21),9%(n=19),18%(n=72),24%(n=116)であり,近年,増加傾向にあった.NBNC肝癌の診断時年齢中央値70歳,男性193/女性50例,BMI24,多飲者151例(62%),糖尿病129例(53%),高血圧112例(46%),脂質異常症95例(39%),HBc抗体陽性112例(46%),HBsAb陽性82例(34%),肝発癌時血小板値14.5万/mm3(中央値),画像上脂肪肝あり41例(17%),臨床的肝硬変144例(59%).2)自己免疫性肝疾患を除くNBNC肝癌の肝切除90例の内訳は,NASH20例(22%),多飲者54例(60%),これらを除いた成因不明16例(18%).NASH症例は,男性10例/女性10例.年齢中央値73歳,BMI中央値25,糖尿病合併14例(70%),HBc抗体陽性10例(50%).Fibrosis stage1/2/3/4は,3/5/3/9例で,40%はNASH early stageからの発癌例であった.多飲者は,男性52例/女性2例,年齢中央値71歳.肝硬変21例(39%).多飲者非肝硬変症例において,BMI中央値24,糖尿病合併17例(52%),HBc抗体陽性17例(52%)であり,これらの因子をいずれも認めない症例は4例(12%)であった.【結語】NASHおよび多飲者発癌症例において,約60%は非硬変肝からの発癌例で,約90%の症例は,糖尿病合併例またはHBcAb陽性者であり,以上の結果は,肝癌スクリーニング対象者の設定に寄与する可能性がある.
索引用語 肝癌, ASH/NASH肝癌