セッション情報 ワークショップ8(肝臓学会・消化器病学会合同)

ASH/NASH肝癌の臨床像とフォローアップ体制の確立

タイトル 肝W8-8:

アルコール性肝障害と非アルコール性脂肪性肝炎を背景とした肝癌症例の臨床的特徴

演者 佐藤 智佳子(山形大・消化器内科)
共同演者 渡辺 久剛(山形大・消化器内科), 上野 義之(山形大・消化器内科)
抄録 【背景と目的】近年,アルコール性肝障害(ALD)や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を背景とする肝癌が増加し,共通の病態も指摘されている.そこでALD,NASHが原因と考えられる肝癌症例の臨床的特徴を比較検討し,フォローアップする上での問題点を考察した.【方法】2001年から2012年までの非B非C肝癌例のうち,エタノール60g/日以上摂取者36例をアルコール性肝障害による発癌例(ALD群)とし,組織学的にNASHと判明した肝癌例7例(NASH群)と背景因子,腫瘍因子,予後を比較した.さらにNASH例では,肝発癌例6例と年齢をマッチさせた非肝発癌例18例の背景因子も比較した.【成績】当科の肝癌314例中,20%が非B非C肝癌例であり,ALD群は51%,NASH群は9%であった.背景因子では,ALD群では発癌年齢が低く(62歳 vs. 75歳,p<0.01),男性が多く(35/1:97% vs. 6/1:86%),Child-Pugh B/CのLCが多く(14/14:50% vs. 0/5:0%),食道静脈瘤の合併が多かった(21/34:62% vs. 1/7:14%, p<0.05).NASH群では糖尿病の合併が多く(19/36:52% vs. 7/7:100%, p<0.05),Met症候群のリスク因子数2以上の例も多かった(12/34:35% vs. 5/7:71%).血液生化学検査では,ALT,AST,T.Bil,PLT,PTの中央値には差がなかった.ALD群ではγGTPが,NASH群ではHbA1c,TG,TCが高かった.ALD群はAFP値が高く(20 ng/ml vs. 5 ng/ml, p < 0.05),腫瘍数が多く,3cmを超える例が多かった(16/36:44% vs. 1/7:14%).Stage4症例はALD群で多かった(8/36:22% vs. 1/7:14%)が,累積生存率は差がなかった.またNASH発癌群は,非発癌群に比し,男性に多く,LCや糖尿病の合併が高頻度にみられた.【結論】ALD群とNASH群では臨床的特徴に差がみられた.ALD群は若年者,肝予備能低下例,進行肝癌例が多く,早期の断酒と定期通院が肝要と考えられた.一方NASH群では糖尿病,Met症候群の合併頻度が高く,健診等によるNASH全体の拾い上げとMet症候群の治療による発癌の減少が期待される.
索引用語 NASH, 肝癌