セッション情報 ワークショップ8(肝臓学会・消化器病学会合同)

ASH/NASH肝癌の臨床像とフォローアップ体制の確立

タイトル 肝W8-10:

非B非C肝癌におけるオートファジー関連蛋白の発現と臨床像

演者 今 一義(順天堂大・消化器内科)
共同演者 池嶋 健一(順天堂大・消化器内科), 渡辺 純夫(順天堂大・消化器内科)
抄録 【目的】非B非C肝癌が増加傾向にあるが,その病態は不明な点が多くスクリーニング体制も確立できていない.これまでに我々は,非B非C肝癌ではHCV陽性肝癌と比して血清PIVKA IIの陽性率が高いことを示したが(JDDW2010)その機序は不明である.癌抑制遺伝子Ptenの肝特異的ノックアウトマウスはNASH由来肝癌に酷似した病理像を呈し,肝組織ではオートファジーが抑制されている.今回我々は,肝癌組織におけるPtenおよびオートファジー標的蛋白P62の発現と臨床所見の関連性について解析を行った.【方法】2009年1月‐2012年3月の間に肝切除術を受けた肝癌患者でHBs抗原・HCV抗体が陰性の症例17例(NBNC群),HCV陽性20例(HCV群),結腸・直腸癌肝転移9例(対照群)を解析した.背景肝組織,腫瘍周囲肝組織,腫瘍部のPtenおよびP62の免疫組織染色を行い,染色の強さによって4段階にスコア化した.【成績】全ての群で男性が多く,HCV・NBNC群が対照群と比較して有意に高齢であった.NBNC群では血清γGTP値が有意に高値であり,血清PIVKA II高値率はNBNC群で93%と他群と比べて有意に高かった(p<0.05).Pten発現は対照群で部位による変化がなかったが,HCV群,NBNC群では腫瘍に近づくにつれて減少した.特にNBNC群では背景肝および腫瘍部共に減少が顕著であり,背景肝もしくは腫瘍部同士で比較すると,HCV群では対照群と有意差が認められなかったが,NBNC群は有意な減少を認めた(p<0.05).P62の発現はHCV群およびNBNC群で腫瘍部において有意な増加を認めた.血清PIVKA II陽性率と肝癌の分化度ないし脈管浸潤所見の間には有意な相関性を見いだせなかったが,PIVKA II高値の肝癌ではPIVKA II正常値の肝癌と比較してPten発現の有意な低下を認めた(p=0.013).【結論】Vit.Kがオートファジーを介して癌細胞に対して抑制的に作用するとの報告がある.今回のデータはPtenの発現低下と血清PIVKA II上昇の関連性を示唆しており,Ptenおよびオートファジーの関与の解明は非B非C肝発癌の予測・早期発見に有用である可能性が示された.
索引用語 オートファジー, PIVKA II