抄録 |
背景:非B非C肝細胞癌は初回肝切除後に比較的良好な肝機能を呈し,予後が比較的良好であることが報告されているが,常習的な飲酒,あるいは非アルコール性の肝障害が術後予後に与える影響は未知である.方法:2000年4月~2012年3月における連続555例の切除症例から肝外転移を伴わない545例を対象とした.HBV群が96例,HCV群が275例,HBV+HCV群が4例,非B非Cは170例であった.週1回以上の飲酒を常習歴と定義した.非B非C (NBNC) 症例で常習歴なしの81例 をNA群,常習歴ありで一日80g以上の35例をAH群,常習歴なしで80g未満の54例をAL群と定義して統計学的解析を行った.結果:平均観察期間は2.6年だった.NA群,AL群,AH群,HBV群,HCV群の組織学的肝硬変症例の割合はそれぞれ,20%,32%,49%,52%,56%であった.慢性肝炎の組織所見はNA群が53%,AL群が30%,AH群が34%であった.NBNC症例ではPT%, Albumin, ICG-R15%, T-Bil, Child-Pugh scoreなどの肝機能に差はなかった.腫瘍径はHCV群より大きく(P<0.0001),個数や肉眼的,病理学的脈管侵襲に差はなかった.NA群のDCPは他の4群のそれより明らかに低かった(P=0.0005).解剖学的切除,病理学的切除断端の有無に差はなかった.無再発生存期間において,NA群はHCV群より,AL群はAH群,HBV群,HCV群らより明らかに予後良好だったが,AH群はHBV群,HCV群と差がなかった.全生存期間においては,NA群はAL群より予後不良でAH群,HBV群,HCV群と変わらなかった.AL群はNA群, HCV群, HBV群より予後良好だった.AH群はHCV群より予後良好であった.多変量解析では,AH群,HBV群,HCV群,ICG-R15,AST,腫瘍径,Vp,解剖学的切除がDFSの独立因子であり,OSではAST, PT%, 病理学的動脈侵襲,HBV, HCVが予後因子であった.結論: 肝切除術後AL群は最も炎症が低く予後良好であったが,AH群はHBV, HCVとDFSが変わらなかった.NA群はDCPが低く,繊維化が少ないが慢性炎症が多く,AL群以外と同様に予後不良だった.NA群の病態生理学につきさらなる精査が必要である |