セッション情報 ワークショップ8(肝臓学会・消化器病学会合同)

ASH/NASH肝癌の臨床像とフォローアップ体制の確立

タイトル 肝W8-13:

NASH・アルコール性肝障害における肝発癌の比較

演者 児玉 和久(東京女子医大病院・消化器病センター)
共同演者 徳重 克年(東京女子医大病院・消化器病センター), 橋本 悦子(東京女子医大病院・消化器病センター)
抄録 【目的】我々はNASH,アルコール性肝障害(ALD)における肝細胞癌(HCC)について,発癌率,発癌危険因子,臨床病理学的特徴について比較検討した.
【対象と方法】【1】NASH肝硬変(NASH-LC)77例(平均観察期間57ヵ月),ALD肝硬変(ALD-LC)91例(平均観察期間43ヵ月)に関して,HCC発癌頻度と発癌危険因子を比較検討した.【2】NASH-HCC51例,ALD-HCC175例に関して臨床病理学的特徴・生存率・HCC根治治療例の再発率を比較した.【3】HCC切除例(NASH-HCC17例,ALD-HCC27例)に関して癌部・非癌部を組織学に比較検討した.
【結果】【1】NASH-LC10例,ALD-LC6例にHCC発癌を認めた.性・年齢を調整した5年HCC発癌率はNASH-LC10.5%,ALD-LC12.3%であった.HCC危険因子はNASH-LCでは高齢,γGTP高値,Child-Pughスコア高値で,ALD-LCではDMであった.
【2】NASH-HCCはALD-HCCと比較して,高齢で女性が多く,BMI,Albは高値で,γGTPは低値であった.生活習慣病の合併頻度は差を認めなかった.5年生存率は,NASH-HCC 47.8%,ALD-HCC47.5%であった.HCC根治治療例の5年再発率は,NASH-HCC 82.4%,ALD-HCC 84.6%であった.
【3】病理学的検討では,非癌部F4の割合(NASH-HCC 66%, ALD-HCC 69%)は同等で,steatosis中等度以上の頻度がNASHで高率であった.癌部は両疾患ともに,中分化型・索状型が高率であった.Steatohepatitic HCCの特徴的所見は,steatosis(NASH-HCC 50%, ALD-HCC 46%),Mallory-Denk体(NASH-HCC 59%, ALD-HCC 51%)を癌部に認めた.
【結語】NASH-LC・ALD-LCからのHCC発癌率は,両疾患ともに年率約2%で,HCC根治治療例の5年再発率は約80%と高率であった.また組織学にも類似した特徴を示した.両疾患ともに肝硬変からのHCC発癌,根治治療後の再発に十分注意したfollow upが必用である.
索引用語 NASH, アルコール性肝障害