セッション情報 ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝胆疾患の非定型例に対する対応と課題

タイトル 肝W9-1:

最終転帰からみた急性発症型自己免疫性肝炎の診断と治療

演者 海老沼 浩利(慶應義塾大・消化器内科)
共同演者 金井 隆典(慶應義塾大・消化器内科), 齋藤 英胤(慶應義塾大・消化器内科DELIMITER慶應義塾大・薬学部薬物治療学)
抄録 【背景と目的】急性発症型自己免疫性肝炎(AAIH)はその存在が認知はされてきているが,自己抗体陽性や高IgG血症といった典型的特徴を呈さず,さらには凝固能低下のため組織学的検索が行えず,未だ的確に診断できるケースは多くない.我々はこのようなAAIHの重症型・劇症型を呈する症例に対して,診断がつかない症例も含めて早期の治療介入を推奨,実践してきた.そのことにより,早期の死亡もしくは肝移植を回避することができたが,最終的な診断も含めた転帰については未だ不明である.そこで今回AAIH症例のその後の最終診断と転帰につき解析した.【対象と方法】2000年から2013年に経験したAAIH46例をその検査所見,診断,治療,予後につき検討した.また,最終的な病理組織像や経過を含めてその診断を見返した.【結果】平均年齢は45.6歳.その中で31例が急性肝不全(劇症肝炎13例,LOHF 2例,非昏睡型16例)と定義された.AAIHの診断は従来どおり(1)AIH診断基準 (2)病理所見をもとに,(3)経過(亜急性)(4)CT画像所見を追加して行った.治療は,出来る限りに早期にPSLパルス療法やサイクロスポリン(CyA)といった強力な免疫抑制療法を行い,急性肝不全移行例でも23/29(79.3%)が内科的治療で救命できたが,3/29(10.3%)で感染症が死因となった.生存例の中で3例はPSL治療を中止し再燃を認めていないが,その他はPSL治療を継続,7/23(30.4%)で再燃を来たした.急性肝不全症例の中で23例でその後の組織像が得られ,多くはAIHに矛盾しない肝炎像を呈するが,移植例ではmassive necrosis,肝機能改善例の中には肝炎の所見に乏しく確定診断に至らないケースもあった.【結論】AAIHは組織学的検索が行えないケースが多く,確定診断がつかないまま免疫抑制療法に踏み切ることも多い.最終的転帰から振りかえると治療時には診断できないことも多く,感染症のリスクはあるものの亜急性肝炎としての早期治療介入が望ましいと考えられた.
索引用語 急性発症型自己免疫性肝炎, 転帰